このページは、書籍『音楽ビジネス著作権入門』(佐藤 雅人 著、ダイヤモンド社 刊)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。
・音楽ビジネスの基本は、三者の権利
一枚のCDには、
①アーティストの演奏・歌唱に係る権利
②作詞家・作曲家の創作した楽曲に係る権利
③レコード製作者が録音した音源に係る権利
が詰まっています。
・音楽ビジネスの基本は、三者の権利(中略)
●歌を歌えば、だれでも実演家です。プロ、アマ問いません。
●アーティストには、録音権(演奏・歌唱を無断で録音されない権利)があります。
●録音権には、録音物を無断で増製されない権利も含まれます。
・レコードとは、レコード盤、カセット・テープ、CD、MDなどに「録音されている音」のことです。つまり、音源です。レコードといえば、一般的には黒くて丸いアナログのレコード盤のことですから、ずいぶん違います。
・音源のコピーって、どんなこと?
音源のコピーには大きく2つに分けられます。ひとつは、CDなどを生産するために行う録音物自体の増製です。もうひとつは録音物に収録されている音源を別の録音物・録画物や記録媒体に収録することです。たとえば、CD用に録音した音源を別に録画した映像にシンクロさせたり、パソコンなどのハード・ディスクに保存したりすることです。CDからCDへも、もちろん含まれます。
・似て非なるもの、楽曲と音源(中略)
『イエスタディ』は、世界的に有名な楽曲です。ジョン・レノンとポール・マッカトニーによって創作されました。(中略)
この楽曲をいったいどれだけのミュージシャンが歌ったことでしょう。そして、どれだけの録音が行われたでしょう。音源はひとつひとつ違います。「ひとつの楽曲から、無数の音源」が製作されているのです。(中略)
●楽曲(=著者物)by作詞家・作曲家(=著作者)
●音源(=レコード)byレコード製作者
・海賊版は3つの権利を同時に侵害(中略)
海賊版の作成は、ただ単にレコード製作者が持っている音源の複製権を侵害しているだけではなく、同時に、アーティストが持っている演奏・歌唱の録音権と作詞家・作曲家が持っている楽曲の複製権をそれぞれ侵害していることになります。3つの権利は、同時に、別個に働くのです。
・みなし侵害って?
海賊版であるいことを「わかっていながら販売する」行為や、「わかっていながら販売目的で所持する」行為を権利の侵害とみなすのです。侵害と「みなす」とは、法律上で侵害と「同一視する」ことを意味します。それには反論する余地はありません。
・中古CDには権利が及ばない?(中略)
CDであれば、一度販売された時点で譲渡権が消尽してしまうため、その先の販売には譲渡権が及ばなくなります。つまり、中古CDは三者の譲渡権が消尽している商品なのです。したがって、レコード製作者、アーティスト、作詞家・作曲家は中古CDの販売を止めることはできませんし、そこからは何の対価も得られません。
・音楽出版社は、その管理を著作権管理事情者に委託します。主な管理業務は楽曲の利用許諾や使用料の徴収です。代表的な事業者がJASRAC(ジャスラック)です。管理委託には、著作権の移転が伴う信託と、そうではなく取次ぎまたは代理の形をとる委任があり、JASRACであれば信託委任になります
(音楽出版社については「2.作詞家・作曲家と音楽出版社」で、JASRACについては「3.JASRACと著作権等管理事業法」)で解説します。
・楽曲使用料の分配例(中略)
JASRACの使用料規定に照らして計算してみましょう。楽曲はすべて5分以内の場合とします。(中略)
1曲1枚当たりの使用料 = 消費税抜定価 × 使用料率 ÷ 楽曲数
もしくは、8円10銭のいずれか多い額
(現在は運用で6円10銭に読み替えます)
JASRACが規定する使用料率は6%ですので、この場合、
= 3000円 × 6% ÷ 10曲 = 18円
したがって、1曲1枚当たりの使用料は、8円10銭(6円10銭)より多い18円になります。
これに楽曲数と製造数を乗じて総額を求めますと、
JASRACに支払う金額 = 18円 × 10曲 × 1万枚 = 180万円
となります。この金額が、レコード会社からJASRACに楽曲の使用料として支払われます。この使用料からJASRACの管理手数料(使用料の6%相当額)が控除されますので、音楽出版社に支払われるのは、
音楽出版社が受け取る金額 = 180万円 - (180万円 × 6%)
= 169万2000円
となります。支払われた使用料は、作詞家・作曲家と音楽出版社でシェアします。標準的な料率は、音楽出版社が3分の1、残りを作詞家と作曲家で等分です。作詞家と作曲家が同一の場合は、ひとつで3分の2になります。
・アーティストとプロダクション(中略)
音楽の分野以外にも活動の場が広がっています。テレビのバラエティやドラマ、コマーシャルへの出演、写真集の出版、エッセイの執筆などアーティストにはビジネスのチャンスがたくさんあります。
・多くの場合、プロダクションは音楽出版社の機能を自社に持っているか、子会社として音楽出版社を持っています。
・原盤製作はハイ・リスク、ハイ・リターン(中略)
ひとりのアーティストを巡って、どこが原盤権を持つのかはビジネス上の重要なポイントです。レコード会社、プロダクション、音楽出版社それぞれの戦略や三者の力関係が影響します。
・音楽ビジネスでは、印税といえば、アーティスト印税と原盤印税とがあります。(中略)
印税 = 税抜定価 × 印税率 × 売上数
実際には、次の要素が加算されます。
ジャケット費用控除:税抜定価 × 10%
・原盤印税とは、レコード会社が、原盤譲渡契約において原盤に係るアーティストとレコード製作者の著作隣接権を譲り受ける対価として支払う印税です。印税率はアーティストの実績によって差があります。新人であれば12~14%が標準的
・アーティスト印税については、
①アーティストが全額受領
②プロダクションが全額受領
③二者で分配
のいずれかです。二者間の契約によります。
・「著作権の処理は済んだ?」「はい、大丈夫です」(中略)
確認を求めたほうは著作権と著作隣接権の両方のつもりでした。作詞家・作曲家、アーティスト、レコード製作者のすべての許諾が得られなければ利用できないから当然です。しかし、確認を求められたほうが、著作隣接権に気づかないまま作詞家・作曲家の許諾だけしか取っていなかったとすれば、事件です。
・演奏権を、うっかりすると、アーティストの権利と答えてしまいそうです。録音権は「無断で演奏・歌唱を録音されない権利」ですから、アーティストの権利です。著作権は、同じように「無断で○○○を×××されない権利」と覚えておいてください。そうすると、演奏権は「無断で楽曲を演奏されない権利」となりますから、作詞家・作曲家の権利であることがわかります。
・コンサートで演奏・歌唱には(中略)
JASRACの管理楽曲です。早速申請しましょう。(中略)仮に「入場料1500円、定員数が100名」とします。この場合、プロの楽曲を1曲演奏・歌唱する使用料は、360円になります。算出式は次のとおりです。
演奏使用料 = 総入場料算定基準額 × 0.3%
総入場料算定基準額 = 入場料 × 定員数 × 80%
したがって、
演奏使用料 = 入場料 × 定員数 × 80% × 0.3%
= 1500円 × 100名 × 80% × 0.3%
= 360円
なお、入場料を取らない場合でも、定員数100名であれば1曲につき250円の使用料が発生します
・喫茶店が店内でCDをかけたら(中略)
JASRACに使用料を支払うことになります。(中略)一般の店舗で500㎡以内であれば、年間包括契約で6000円となっています。包括契約とは、何曲かけても一律という料金体系です。
・演奏権が制限されるための要件は次の3つです。
①演奏が営利目的でないこと
②入場者から料金を徴収しないこと
③演奏を行う者に報酬が支払われないこと
・肖像権には、人格権としての肖像権と財産権としての肖像権があります。前者は、人が無断で写真や映像に撮られたり、絵に描かれたりしない権利です。また、自分を撮った写真や映像などは無断で公表されない権利でもあります。(中略)
一方の財産権としての肖像権は、肖像や名前が無断で商売に利用されない権利です。たとえば、商品の一部に有名人の肖像や名前を使用すれば、その商品に顧客を誘引する効果が生じます。(中略)
つまり、有名人の肖像や名前には経済的な価値があり、それを無断で使用してはいけないのです。これをパブリシティー権と呼んでいます。
・著作権 ------ (財産権) ----- 著作権 ----- 著作者
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| --- 著作隣接権 ----- 実演家
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| --- レコード製作者
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| --- 放送事業者
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| --- 有線放送事業者
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--- (人格権) ------ 著作者人格権権
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--- 実演家人格権
・著作権(財産権)
音楽の著作者の権利
●複製権
●演奏権
●公衆送信権
●伝達権
●譲渡権
●貸与権
●翻訳権、編曲権、翻案権
●二次的著作物の利用に関する原著作者の権利
●書籍『音楽ビジネス著作権入門~はじめて学ぶ人にもわかる権利の仕組み』より
佐藤 雅人 著
ダイヤモンド社 (2008年9月初版)
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