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[ 書店売上ランキング ]

書店売上ランキング 2011年度 「日経MJ調査+α」 寄稿:冬狐洞隆也氏

日経MJ「第40回 日本の専門店調査 書店売上ランキング」に載っていない書店を追加してみた。
 

 
順位
企業名(本社)
本社
決算月
売上高
前年比
経常利益
店舗数
1
紀伊國屋書店
東京
8月
109,806
▲2.8
430
64
2
TsutayaBooks
東京
3月
104,700
7.4
695
3
ブックオフ
東京
3月
75,716
3.2
3,803
1,016
4
ワンダーコーポ
茨城
2月
65,689
0.1
1,379
97
5
ジュンク堂書店
兵庫
1月
51,135
7.0
▲624
50
6
有隣堂
神奈川
8月
50,638
▲6.5
716
45
7
未来屋書店
千葉
2月
48,014
2.1
1,513
228
8
ヴィレッジヴァンガード
愛知
5月
37,276
6.5
3,462
381
9
フタバ図書
広島
3月
37,072
▲3.7
860
65
10
文教堂
神奈川
8月
35,524
▲10.8
50
184
11
トップカルチャー
新潟
10月
32,405
7.6
1,026
72
12
丸善書店
東京
1月
28,117
▲146
34
13
三洋堂HD
愛知
3月
27,629
▲1.3
618
86
14
三省堂書店
東京
8月
27,552
▲2.5
78
35
15
リブロ
東京
2月
23,472
▲5.2
88
16
カルチェイケダ
東京
9月
22,996
▲1.1
95
17
精文館書店
愛知
6月
18,704
2.7
553
48
18
ニューコ・ワン
熊本
3月
18,029
35
19
キクヤ図書販売
兵庫
6月
15,524
▲3.9
29
20
神奈川くまざわ
東京
9月
14,234
3.4
74
21
文真堂書店
群馬
6月
13,866
▲4.0
125
22
オーエンタテイメント
大阪
2月
13,588
▲1.7
374
51
23
あおい書店
愛知
8月
12,911
▲7.4
10
40
24
すばる
千葉
2月
11,684
4.0
150
31
25
京王書籍販売
東京
3月
10,703
▲1.7
43
26
アシーネ
東京
2月
9,676
0.5
93
27
戸田書店
静岡
9月
9,183
12.0
108
37
28
四国明屋書店
愛媛
6月
6,663
35
29
29
くまざわ
東京
9月
3,605
0.7
14

※単位百万円
※日経MJ 2012年7月 「第40回 日本の専門店調査」から作成


ランキングに入ってきてもよい書店は16企業

ここに公表してない書店でランクに入ってきてもよい書店は16企業で、宮脇書店や本の王国・アバンテイブックセンター・ダイレクトショップ・ファミリーブック・ブックファースト・夢屋書店・ブックエース・パルネット・Net21・東武ブックス・文苑堂・大垣書店・谷島屋書店・田村書店・勝木書店がある。


出版物以外の販売額が含まれている書店もあるので注意する。Tsutaya books は出版物の売上のみで紀伊國屋書店を抜いたが新規店が期中31店も増加したしたので当然である。これが定着するかどうかは誰にもわからない。


地域書店の現状

日経MJの調査結果で4期連続売上減少した書店が4件あるが、いずれ経営の有り方が顕在化してくるだろう。前年比を見ても複合書店か新規の出店があった書店のみがクリアしている状態で、経常利益も公表できず(意識的に公表しない場合もある)、大手チェーン書店が売上不振に陥っているのを見ると、地方の書店は立地条件にもよるが、厳しい経営を迫られている本屋が多数あるのは間違いない。


外食産業と同じように既存店がマイナスになり、新規出店で補完しようとしても益々経営が厳しくなる書店も見受けられている。出版ビジネスモデルは徐々に崩壊しているのが見えているが、何ら有効手段が立てられないのが現状である。


生産年齢人口が益々減少して行き、買う人が減少すれば結果は悪い方にしか出てこないのである。書店でありながら各々業態が違う部分がある未来屋書店・ジュンク堂書店・ヴィレッジヴァンガード・Tsutayabooks ・ゲオHD・ブックオフと地方書店の雄と言われているフタバ図書・大垣書店を注視続けたい。


書店の実店舗数は11,000店前後

書店数は1997年の22,279店をピークに下がり続け、2002年には20,000店の大台を割り、2012年には14,696店にまで減少した。この数字も実店舗数ではなく、実際は11,000店舗前後にまで減少していると推測する。一方で、書店個々の売場面積(出版物の売場だけではない)は増加しており、大手書店による店舗の大型化が政令都市・特例市を中心に進む傾向がうかがえる。しかし何時まで続くかは不透明。


但し、地方の有力書店は地域一番店への争いが進み、店舗間競争が激化したことで、資金不足が顕在化し、支払いに充てる資金を工面するため不振の既存店を廃業・撤退する必要性が生じている(委託制があるから出来る)ことが顕在化してきた。新規書店の出店への投資は昔と違い10年間では回収できない状況で、それは実際に本を購入する生産年齢人口減少をだれにも止められないからである。


日本出版インフラセンター(JPO)の統計によると、100~299坪が3,006店舗・300坪以上が1,068店舗で、内1,000坪以上が82店舗ある。中小出版社は300坪以上の書店管理が重要で、それ以外は営業コストを含め管理効率が悪くなると見なければならない。


中小出版社は、年商10億円以下の書店までは手が回りにくい。後は取次に任せるかネット書店に任せればいいだけの話しであり、それで売れなければ商品が消費者に支持されていないと思わなければならない。


中古本業界の2011年売り上げは推測890億円

書店数が減少することで、読者が出版物に触れる機会が少なくなり、出版物の販売部数が減少するという悪循環が生じていると出版業界関係者は言い切るが、読者は逆に書店で購入できなくても出版物を入手する方法は他にいくらでもあり困ってはいない事の認識が出版業界関係者には不足しているとしか思えない。


でなければネット書店(中古本含む)の急成長や、中古本書店の増加・図書館の貸し出し冊数の増加はあり得ないことになる。中古本業界の2011年売り上げは推測890億円(古書店は別)と見ている。(新刊定価の平均60%引きの値段)で定価に直すと1483億円となる。


大量の本がある中、書店はどう書棚をつくっていくかがキーに

出版業は独別な産業でもなんでもない。著者や編集者の意思がどうであれ、読者がその買った本をどう解釈しようとも書店にとっては売れることが一番重要なことであり、それは他の産業と何ら変わりなく単なる商品である。書店にとっては固定費が上昇すると利益率に変化のない出版物は在庫回転率を重視し、常に在庫をチェックしないと棚が荒れ、不良商品や死に筋商品を持つことになる。新たな商品に入れ替えることが読者視線からもキャッシュフローからも有効であることを認識すべきである。


最近は、生産年齢人口減少で各種業界に変化が見られるが、小売業界が影響を受けるのは各都市の人口総数ではなく、その土地の人口構成だということである。いくら人口総数が増え続けても老齢人口だけが増え続けていては老人コストばかり増えて生産性が全くない状況になっていき、いずれ限界集落が地方都市にも出現してくるはずである。


各地方都市の人口構成の中で老齢人口比率が30%を超えてくると、各小売業の売上が大幅に減少し、商店街が立ち行かなくなるのは目に見えているのに成長だとか活性化だとか美辞麗句を並べて人々を惑わせている輩が何処の業界にもいる。


書店を取り巻く環境は絶望的である。巷では電子書籍の成長・期待が噂されているが電子書籍があってもなくても書店経営としてのビジネスは成り立たなくなるのは遠くないと見ている。それでも経営を継続させたいとの思いのある書店経営者にはポイントカードの導入・中古本の併売・時限再販・複合商品の導入・出版社直取引等、新たな手法も考えられると思う。


先ずは読者ではなくその店の顧客を大事することが重要である。長年の再販制・委託制に慣れた慣習をどう打破できるかどうかにかかっている。


寄稿 : 出版流通コンサルティング 冬狐洞 隆也 氏