このページは、書籍『本はニュースだ!』(上丸 洋一 著、径書房 刊)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。
・もともと編集プロダクションは、全集・百科事典ブームに代表される一九六〇年代半ば以降の大量生産・大量販売の流れの中で生み出されてきた。全集などの編集には、多くの人手がかかる。が、雇用を増やしたら、その後の人件費負担が大きい。このため出版社は仕事を外部に発注するようになったのだ。
・毎日百店以上出版されている新刊書のうち、三、四割はプロダクションがつくっているといわれている。本には発行元の出版社の名前しかないが、実際につくったのはプロダクションという本は、著名作家の文芸書や専門書などを除いて、ほとんどすべてのジャンルに及んでいるという。
・読者にとって、文庫本の魅力の一つは、単行本で読み落とした本を手に入れることにある。単行本が書店に並んでいる時間が短い分、文庫本が補完している側面がある。ところが、最近は文庫本自体、短命。発売時にどれだけ売るかで勝負しているとみられる文庫出版が目立つ。
・ドメス出版(東京・駒込)(中略)創業以来二十二年間に刊行した三一七点のどれ一つ断裁したことがないという
・日本には国営出版社がある、といったらちょっと意外かもしれない。ほかでもない、大蔵省印刷局。事業案内のパンフレットにも「国の企業」と書かれているから、国営出版社と呼んでもおかしくなさそう。
・人文社会系の出版社・新評論のPR誌(六九号)に、面白いデータが紹介されている。主要な新聞、雑誌の書評欄に、どの出版社の本がよく取り上げられているか、昨年一年間の新刊点数と延べ掲載件数から、その“打率”を出したものだ。
それによると、一位は、十七点刊行して二十七回取り上げられた新評論。以下、草思社、晶文社、法政大学出版局、サイマル出版会の順で続いている。
・精神医学、心理学の本を専門に出版している星和書店(東京都杉並区上高井戸一の二の五)は、一階がショールームになっている。大手出版社の中にも自社の出版物をショールームに展示しているところがあるが、星和書店の場合は、よその出版社の本も含むて、精神医学とその関連領域の専門書を網羅しているのが特徴。五十平方メートルほどのスペースに、洋書、専門誌を合わせて七、八千点がそろっている。普通の書店ではなかなかお目にかかれない本もここにくれば来れば手に入ると、研究者らがよく利用しているそうだ。
※参考:星和書店のウェブサイトはこちら
・三年前の春のこと。ミヒャエル・エンデの代表作『モモ』(岩波書店)が突然、売れ出したそうです。週に千部も売った書店があったほど(中略)答えはなんと小泉今日子。「朝までかかって一気に読んで、本を読んでこんなに感動することがあるんだなって驚いちゃって」と話している記事が本紙芸能面(読書面ではありません)に載ったのがきっかけとか。(中略)
出版情報誌『クリッパー』(日本エディタースクール出版部)にそのまま収録されています。(90年3月4日)
・東京駅八重洲ブックセンター(中略)
客から受ける注文は、人文科学・理工学書を中心に、一日平均約百三十点にのぼる。
・ベストセラーや話題の本は、大型書店に重点的に配本され、小規模な店には十分に回ってこないことが多い。このため、小規模書店は売れ行きのいい本を確保する必要上、「客注専用伝票」を見込み注文分に転用するようになった。一方、出版社の方は「書店の言う通りに配本して、あとで返品に泣くのは版元」というわけで、「客注専用伝票」による注文では、数を減らして配本したり、全く配本しなかったりする。結局、迷惑を被るのは、本当に注文を出した読者。専用伝票が本来の役割を果たしていないのだ。
・出版社が本を絶版・品切れにするのは第一に経営上の理由だ。在庫としては持っていれば、倉庫料や税金がかかる。評価は高くても売れないことには出版し続けるこのは困難。売れる見通しが立たないために増刷しないまま品切れにしている本を復刊するとなると、営業上かなりのリスクを背負うことになる。
・白水社の藤原一晃氏は「本がなぜ売れるかなんて、本当のところはだれにもわからないんじゃないですか」と話していた。
・出版は書き手、作り手、送り手、売り手だけで成り立っているものではありません。いうまでもなく、読者あっての出版です。ところが、このことが出版関係者にどれほど意識されているか、出版界を取材しているとき、しばしば疑問にもったものです。この人たちが大事だといっているのは読者ではなくて購買者なのではなかろうか。買ってくれればそれでよし、あとは読もうが読むまいが関係ないというのが率直なところではないかと。
●書籍『本はニュースだ!』より
上丸 洋一 著
径書房 (1993年7月初版)
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