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1997年に消費税が5%に増税され、その後、出版業界がどうなったか検証し、2014年4月に8%・2015年10月10%に増税なると、2015年以降出版流通どうなるか考えてみたい。
年 |
書籍 |
前年比 |
雑誌 |
前年比 |
合計 |
前年比 |
1996年 |
10,931 |
4.4 % |
15,663 |
1.3 % |
26,564 |
2.6 % |
1997年 |
10,730 |
▲1.8 % |
15,664 |
0.1 % |
26,374 |
▲0.7 % |
1998年 |
10,100 |
▲5.9 % |
15,315 |
▲2.1 % |
25,415 |
▲3.6 % |
1999年 |
9,936 |
▲1.6 % |
14,672 |
▲4.2 % |
24,607 |
▲3.2 % |
2000年 |
9,706 |
▲2.3 % |
14,261 |
▲2.8 % |
23,966 |
▲2.6 % |
2001年 |
9,456 |
▲2.6 % |
13,794 |
▲3.3 % |
23,250 |
▲3.0 % |
2002年 |
9,490 |
0.4 % |
13,616 |
▲1.3 % |
23,105 |
▲0.6 % |
2003年 |
9,056 |
▲4.6 % |
13,222 |
▲2.9 % |
22,278 |
▲3.6 % |
※単位は、億円
出版物の売上のピークが1996年。翌年消費税が5%になった時から15年間下がり続けて、現在は書籍・雑誌合計18,042億円となっている。2002年書籍の前年比をクリアしているのは、ハリーポッターの売上の寄与である。
2012年ロンドンオリンピックも終わったが、困ったことに少年柔道・少年野球に加入する子供の少なさにクラブチームは困っている状況にある。しかし、これも少子化の影響でいずれ予備校・私立中学・高校にも影響が出始めるだろう。
CVSの雑誌販売も順次下がってきていたが、2007年以降、急激に下がり始めたのは現役世代(生産年齢人口)の人口減少と少子化が更に進んだ結果である。消費税増税で間違いなく出版物の売上は大幅な減額が続くと予想する。
年 |
廃業店数 |
新規店数 |
1997年 |
1,126 |
847 |
1998年 |
1,066 |
742 |
1999年 |
1,134 |
626 |
2000年 |
1,253 |
600 |
2001年 |
1,198 |
376 |
2002年 |
1,298 |
419 |
2003年 |
1,085 |
355
|
7年間合計 |
8,160 |
3,965 |
もちろん、1997年以降の閉店理由は増税問題だけはないが、消費税が3%から5%に増加しただけで、書店数がこれだけ減少した。今度は2年間で5%の増税になるので、書店の廃業がどのくらいかは予想つかない。新規出店はもちろんあったが、昔の新規出店への投資金額は5年で回収できた。これが、今では10年以上掛かることを考えると、余程の事が無い限り、新たな投資は控えるので昔の出店数の様には戻らないだろう。
日本の書店数はアルメディアの調べによると、1999年19,179店あったが2012年5月には14,696店になり、4,483店が消えていった。消費税増税で閉店はさらに加速すると確信する。
いくら大型店の出店があろうと、中小書店の雑誌販売数は地域密着で、大手書店の販売数の比ではない。中小書店の廃業によって、雑誌出版社は更に窮地に追い込まれてくるだろう。
廃業店数が増えて新規店数が少なくなれば、当然、出版市場は小さくなり、出版社の更なる売り上げの減額は進み、返品率も多くなる。小手先の返品率対策は結果的に失敗するように見え、血を流してでも委託制度を変更しなければ根本的な対策は取れないと感じる。
年 |
出版社数 |
増減 |
倒産件数 |
負債総額 |
1997年 |
4,612 |
10 |
- |
- |
1998年 |
4,554 |
▲158 |
- |
- |
1999年 |
4,406 |
▲48 |
- |
- |
2000年 |
4,319 |
▲87 |
52 |
18,799 百万円 |
2001年 |
4,424 |
105 |
60 |
11,286 百万円 |
2002年 |
4,361 |
▲63 |
62 |
18,895 百万円 |
2003年 |
4,311 |
▲50
| 55 |
11,937 百万円 |
2011年現在の出版社数は3,734社で、1997年から比べると▲878社減少している。1999年以前の倒産件数は不明。消費税増税により更なる社数減が予想されるが、兼業出版社の多くが儲からないと分かれば即廃業してくると見る。
市中在庫はそれほどの影響ないと思うが、体力の落ちている専業出版社の廃業・倒産となると市中在庫も多く一筋縄ではいかない。出版社の原則であった多品種少量販売は、いつの間にか多品種“多量”販売に移り、見せかけの販売統計を各社発表しているが、既に消費者は広告のウソに気付いている。出版点数が落ちてくれば、当然、印刷用紙や印刷会社・製本会社に影響が出てくるのは必然でこちらは廃業よりも倒産が加速する。
以上のことから、出版市場の成長は無いものと見る。さらに追い打ちをかけるよう電子書籍の問題もある。電子書籍の定着の兆しは見えてこないが、電子書籍が有っても無くても無駄なバラ色の幻想は止めて、2年後の消費税増税開始に伴う各々の対策をどうするか検討始めるべきである。
増税前に一時的な駆け込みの売上は上がると思うが、持続性が無いことは既に承知している。取次も無駄な仕入はしないと見るし、チェーン書店も仕入を控え、今以上に本部の仕入強化が始まると見る。
2015年以降、価格の10%が消費税で取られるのでは中古本屋・バーゲンブックの拡大や図書館の貸出が伸びると予想する。中古本屋の出店は減数(中古品の併売は増加)が予想されるが、出版社の在庫増により新刊書店のバーゲンブック併設・時限再販が拡大の兆しがあると考える。
寄稿 : 出版流通コンサルティング 冬狐洞 隆也 氏
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