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出版ニュース社が発行する『出版事典』(1971年12月初版)によると、「装幀」が書かれ、「装釘」、「装丁」とも書くとあります。また、本来、この字は、装訂(装いさだめるの意)が正しいといわれ、また装幀の幀は字音タウで掛物を意味し、書物の場合には装釘、装丁が適当という説もあり、必ずしも一定でないようです。
これらどの字を使うかは、出版社や装幀家によって、こだわりがあることが多いです。その一人が雑誌『暮しの手帖』の創刊者として著名な花森安治さん。花森安治さんは、“そうてい”は、“装丁”と書くのは論外だと言っています。そのこだわりを書籍『花森安治の編集室』(唐沢 平吉 著、晶文社)から紹介したいと思います。
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辞典をひけば、装釘には「釘」を含めて4つの表記がある。(※参考:装丁・装訂・装釘・装幀)辞典はいずれも「装訂」を正しい表記としています。つまり訂が正字なのですが、花森安治にいわせると、どうしても釘にしなくては、スジがとおらないのでした。
「幀という字の本来の意味は掛け物だ。掛け物を仕立てることを装幀という。本は掛け物ではない。訂という字はあやまりを正すという意味だ。
ページが抜け落ちていたり乱れているのを落丁乱丁というが、それを正しくするだけなら装訂でいい。しかし、本の内容にふさわしい表紙を描き、扉をつけて、きちんと体裁をととのえるは装訂ではない。作った人間が釘でしっかりとめなくてはいけない。
書物はことばで作られた建築なんだ。だから装釘でなくては魂がこもらないんだ。装丁など論外だ。ことばや文書にいのちをかける人間がつかう字ではない。本を大切に考えるなら、釘の字ひとつおろそかにしてはいけない」
●書籍『花森安治の編集室』より
唐沢 平吉 著
晶文社 (1997年9月初版)
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