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小菅 宏 氏 書籍『「ジャニー喜多川」の戦略と戦術』(講談社 刊)より

このページは、書籍『「ジャニー喜多川」の戦略と戦術』(小菅 宏 著、講談社 刊)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。


・ジャニー喜多川(本名 喜多川 擴 きたがわ ひろむ、以下J・Kと記す)


・世に送りだした背後に次世代の予備軍をバックダンサーとして顔見せさせる戦術は、創業時のジャニーズのバックで踊ったフォーリーブスの時代からの連綿と変わらない。


・「人間はだれでも素晴らしい才能をもって生まれてくる。その才能の中身は違うから、その特徴を伸ばしてやる。それが個性というものだから。ただそれだけ。叱ったりせず、引き出してやるのが僕の役目」

J・Kは昔も今も、この信念に沿って少年たちに接する。


・J・Kは決して少年たちを叱らない。注意はするが叱責したりすることは稀である。彼の発想の根幹には、まだ人間形成が未完成な時期の少年は褒めて成長させるという信条があり、少年独自の才能こそが大事と考える思考の持ち主だから。


・アイドルグループのメンバーが何かの問題に対して意見を交わすとき、J・Kが口を挟まない姿勢は現在も同じだ。最終結論はJ・Kが下すが、それまでのプロセスはメンバーに任せるやり方だ。


・三十八年前のある日、J・Kが私に洩らした言葉が強く印象に残っている。「僕は男性版宝塚を実現したい。いや必ずやる。見ていて」


・ミュージカル『いつかどこかで』(中略)

ミュージカルは前半がコメディタッチ、後半はドラマチックに急展開する男の友情物語。ちなみにこの物語は、その後ジャニーズミュージカルの典型的なパターンとなる原型である。


・アイドルのアイドルたる所以(存在理由)は当人がアイドルを演じている自分に酔えるから成立する。


・新しいオーディション形式(中略)

指定された日に指定された場所に集まった少年たちは、いつどんなふうにオーデションが開始されるのか一切知らされない。だだっ広い会場で自由にしていていいと言われるだけのこともある。

仲良しになった同士で話し合う者、マンガを読みふける者、一人離れている者、会場を出たり入ったり落ち着かない者、携帯電話のゲームに熱中する者・・・・・・と少年たちの生態はさまざま。そこへ小柄な中年男性が参加者に軽食や飲料水のペットボトルなどを配って歩く。丁寧に礼を口にする少年、無言で受けとる少年、まったく無視する少年と千差万別。参加者の少年が中年男性に声をかける。

「ねえ、おじさん、オーディションははじまらないの?」
するとペットボトルを配り終えた中年の男が答える。
「ユーたちのオーデションは終わったよ」
「えっ?まだ何もやってないじゃないの。Jさんって来ないの?」
「僕がJだよ」
目を丸くした少年は信じられないように口を半開きしたまま、という逸話は枚挙にいとまがない。

何かをさせられるといった強制的な目的意識で行動する少年には嘘が出る。見栄が出る。正直な性格は制約なく自由にさせているときに表れる。


・オーデションで選んだからといってJ・Kは決まったレッスンを課すことはない。明日からレッスン場に遊びにおいで。その一言がジャニーズファクトリーへの許可証であり、ジャニーズJr.への通行手形となるだけだ。(中略)要は本人の自覚とやる気次第。デビューへの具体的なマニュアルが本人に伝達されることもないのがJ・Kの特徴的なやり方だ。


・アイドルに変装やコミカルな化粧をさせることを原則的にタブーとした時代。(中略)だがある日、J・KはSMAPに、俗に言う「被り物(鬘や化粧をして返信すること)」を許可したのである。(中略)『夢がMORIMORI』(フジテレビ系)でSMAPはの人気は一気に全開するのだ。奇跡の根幹は「笑いのとれるアイドルグループ」というコンセプトによるもの。


・かつてJ・Kは私にこう語った。

「一つのグループ(チームとも表現する)で全員がリーダーになれるわけではない。人それぞれ立つ位置が決まっているので、それをメンバー相互が譲り合いながらバランスを保てるかどうかで活動の場が得られる。そのときにエンターテイナーとしての人間的な力量が問われるんです」


・スポーツと音楽を自然に融合できる少年たち、Sports Music Assemble People(SMAP)でなければならなかった


・J・Kはジュニアたちにダンスのレッスンを強制したりしない方針で一貫している。好きこそものの上手なれの精神なのだ。好きでもないことを望んでも成功しない。だが、熱心にレッスンに顔を見せる少年たちには親しく接した。


・ジャニーズアイドルにとっての最大のタブーは「女性問題」だった。王子には王女以外の異性が存在することは絶対に許される状況ではない。


・「中居(※正広)クンは頭がいいから」

J・Kは中居をそう評価するが、この言葉のもつ意味は案外に深い。短絡的に、博識だかたとか計算が速いとかの頭脳の優秀性を意味するのではなく、グループへの公平性、平衡感覚、気配り、自己確認などでメンバー間での立ち位置をわきまえているとの意味合いである。


・Kinki Kidsの評価が高いのはキャラクターの妙に尽きる。J・Kの構成は、ジャニーズ王道の堂本光一に、まったく対極にあるヤンチャな感じの堂本剛を配することで、それぞれの個性を際立たせた点にある。


・J・Kの郷に対する熱情はこの信頼関係の上に成り立っていたからだが、ただ、郷への熱意には並々ならぬ個人的な愛情があったことも否定できない。愛は信頼のうえに築かれる。


・ジャニーズアイドルもまた「親近感のあるちょっとイイ少年」の印象が強い。飛び切りではなくても親しみやすくてちょっとカッコイイ、が現代の空気と合致したのである。(中略)


代表格が国民的アイドルグループのSMAP。彼らはストリートファッションを好み、楽屋ネタ(身内話)をトークで暴露し、彼女の存在(木村拓哉)は既婚者を隠さない。


●書籍『芸能をビッグビジネスに変えた男 「ジャニー喜多川」の戦略と戦術』より
小菅 宏 著
講談社 (2007年3月初版)
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