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[ 出版業界について ]

児童書における市場規模の推移 寄稿:冬狐洞隆也氏

児童書市場規模の推移を紹介したい。
 

年度
新刊点数
前年比
販売額
前年比
1998年
2880
-
700 億円
-
1999年
2566
▲10.9
720 億円
2.9
2000年
2666
3.9
760 億円
5.6
2001年
2849
6.9
920 億円
21.1
2002年
2974
4.4
1100 億円
19.6
2003年
2933
▲1.4
950 億円
▲13.6
2004年
3261
11.2
1060 億円
11.6
2005年
3610
10.7
920 億円
▲13.2
2006年
3553
▲11.6
1000 億円
8.7
2007年
3651
22.8
900 億円
▲10.0
2008年
3531
▲3.3
940 億円
4.4
2009年
3522
▲0.3
830 億円
▲11.7
2010年
3197
▲9.2
795 億円
▲4.2
2011年
3223
0.8
803 億円
1.0

※出版科学研究所より

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委託の弊害

年々、幼児数が減少する中で、出版点数も減少し始め、販売額も1000億円に届かなくなった。これにより、書店店頭の児童書売り場はより厳しさを増してきている。2002年・04年・06年が1000億円になったのはハリーポッターの販売によるもの。


児童書市場の実力は800億円前後と思われるが、児童書出版社以外の参入で点数だけ増加し、マーケティングが出来ず供給過剰の状態である。それと同時に、書店経由ではなく消費者直販が増えてきたのも原因の一つ。委託の弊害がここにも表れている。


児童書の商品回転率は、平均 8.3

出版取次大手の日販調査によると、2011年は児童書の商品回転率は平均 8.3回転。ショッピングセンター内の書店で 11.1回転。商店街の書店で 4.4回転にしかならないことが分かった。これがどのような理由かは改めて説明するまでもないと思う。


ブックオフが絵本を出版した理由

ブックオフが昨年7点絵本を出版した。全て新人作家で、それもワンコイン(500円)で各3000冊発行し、直ぐに追加の重版を掛けたようである。ブックオフの店頭では、児童書の中古本も半値で売られているが殆どがボロボロの状態で、消費者から新刊を出してほしいとの要望があり刊行した。これを契機に4月から自社ブランドの児童書を出版する予定のようだ。


図書館で児童書の貸出冊数が伸びた背景

児童書の入手方法は多岐にわたり、公立図書館では児童への貸出冊数が急激に伸びている。2001年の児童一人当たりの貸出冊数は 17.1冊だったが 2010年は 26冊と増加している。これは単純に家庭の所得金額が減ったことに大きな原因があると考える。只、地方都市自冶体の財政状況も厳しいので、図書館に予算が十分に回ってくるかの疑問もある。


絵本・児童書は読者にとって長い読書人生の扉を開く最初の本。書店業界にとっても最も大切な商材である。少子化と騒がれている今こそ、絵本・児童書で読者の種を蒔かずして、その書店の顧客は実らない。今一度、地域顧客の発掘の意味で、絵本・児童書の見直しをすすめたい。


寄稿 : 出版流通コンサルティング 冬狐洞 隆也 氏