FaxDMトップ > 会社案内 > 成功者の知恵 > 大野 裕 氏 書籍『「うつ」を治す』(PHP研究所 刊)より

大野 裕 氏 書籍『「うつ」を治す』(PHP研究所 刊)より

このページは、書籍『「うつ」を治す』(大野 裕 著、PHP研究所 刊)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。


・うつ病の人はとくに朝早く目が覚めてしまい、そのあとうつうつとした気分が続くことがよくあります。このように朝早く目が覚める状態は、「午前三時症候群」と呼ばれたりします。


・DSM-Ⅳにおける精神疾患の分類

1.通常、幼児期,小児期、または青年期に初めて診断される障害
2.せん妄、痴呆、健忘および他の認知障害
3.一般身体疾患による精神疾患
4.物質関連障害
5.精神分裂病および他の精神病性障害
6.気分障害
7.不安障害
8.身体表現性障害
9.虚偽性障害
10.解離性障害
11.性障害および性同一性障害
12.摂食障害
13.睡眠障害
14.他のどこにも分類されない衝動制御の障害
15.適応障害
16.臨床的関与の対象となることになる他の状態


・九つの抑うつ症状

(1)抑うつ気分(中略)

「憂うつだ」「悲しい」「何の希望もない」「落ち込んでいる」と言って悩んでいることがよくあります。(中略)

こうした症状は午前中にひどく、午後から夕方にかけて改善していることが少なくありません。

(2)興味や喜びの喪失(中略)

(3)食欲の減退または増加(中略)

(4)睡眠障害(不眠または睡眠過多)(中略)とくに朝早く目が覚めるのはうつ病に特徴的で、このような睡眠状態を(中略)「午前三次症候群」と呼ぶ人もいます。(中略)

(5)精神運動の障害(強い焦燥感・運動の抑止)(中略)

身体の動きが遅くなったり、口数が少なくなったり、声が小さくなったりすることがよくあります。このような状態を、専門的には精神運動制止と言います。(中略)

(6)疲れやすさ・気力の減退(中略)

(7)強い罪悪感

うつ病になると、ほとんど根拠なく自分を責めたり、過去些細な出来事を思い出しては悩んだりするようになります。(中略)

(8)思考力や集中力の低下(中略)

(9)死への思い


・朝に悪化し夜に改善する日内変動(中略)

こうした日内変動に加えて、先ほどあげた、はっきりとした抑打つ気分、普通より二時間以上早く目が覚める早朝覚醒、著しい精神運動制止または焦燥、明らかな食欲不振または体重減少、過度で不適切な罪責感、といった症状が見られる場合には、「メランコリー型」のうつ病と呼ばれます。


・妄想などの精神病症状

うつ病が重くなると、(中略)現実にはそうしたことはないのに、貯金が底をついてしまって自己破産をするしかない、自分は何もできない無力な人間だ、などと。自分のことや自分の能力を極端に低く見る微少妄想といった、精神病症状が認められることがあります。


・妄想や幻聴を伴う精神病性のうつ病になる割合は、以前に双極性障害などの気分障害にかかたことがある場合や、家族に双極性障害を持つ人がいる場合に高くなる可能性があります。


・高齢者がうつ病になると、合併している身体の病気や身体機能に好ましくない影響を与えますし、自殺の危険性も高くなるので積極的に診断し治療することが必要になります。また、うつ病にかかっている高齢者は、死亡率が高くなるという報告もあります。


・高齢者のうつ病の場合には痴呆に似た症状がでていて、自分のいる場所がわからなくなったり、日時がわからなくなったり、物忘れがひどくなったりすることもあります。これは、症状がだんだん進行していく本当の痴呆と違って、うつ状態が良くなれば改善するので、一時的な痴呆状態という意味で「仮性痴呆」ないしは「偽痴呆」と呼ばれています。


真性の痴呆の場合は、物忘れがひどくなっても本人は気にしませんが、「仮性痴呆」の場合は、患者さんは自分の記憶力の低下に悩みます。


・高齢者のうつ病の特徴(中略)

うつ病の高齢者ではほとんど人に睡眠障害が現れるし、強い焦燥感もごく一般的に見られます。


・心理的治療とは、考え方や気持ちを整理することによって精神的な苦痛を軽くする方法で、精神療法や心理療法とも呼ばれます。なかでも、認知療法、対人関係療法の二つの心理的治療はうつ病に効果があるとして注目されています。


・認知というのはものの考え方とか受け取り方という意味です。私たちは、現実をそのまま客観的に見ているわけではありません。私たちは、主観的な判断に基づいて現実を見ています。つまり認知のフィルターを通して、自分なりの世界を作り上げ、その中で一喜一憂しているのです。


・強いストレスによる失敗の悪循環(中略)

私たちが普通に部屋を出ようとしてドアを押してぶつかると、すぐに引いてみます。ところが「火事だ!」と考えて頭がいっぱいになっていると、押すだけ押して引くことができなくなってしまうのです。こうしたことはいろいろなストレス状況で起きています。


・うつ病の患者さんは、「集中できないし、物覚えも悪くなった。だから自分はだめな人間だ」(自分に対する否定的な考え)、「自分は何一つおもしろい話もできなくて、こんな人間とつきあいたいと思う人なんでいないだろう」(周囲に対する否定的な考え)、「このつらい気持ちは一生続いて絶対に楽になるなんてならない」(将来に対する否定的な考え)といった考えに支配されているというのです。これを、ベックは、自己、世界、将来の三領域における否定的認知の三徴と呼びました。

※ベックとは、アーロン・ベックのこと


・認知の歪みの七つのパターン(中略)

(1)恣意(しい)的推論
証拠が少ないのにあることを信じ込み、物事を思いつきで独断的に推測し判断する状態です。(中略)

(2)二分割思考
曖昧な状態に耐えられず、物事を、いつも白黒をはっきりさせておかないと気が済まない状態です。

(3)選択的抽出
自分が関心のある事柄にだけ目を向けて結論を急ぐ状態です。

(4)拡大視・縮小視
自分の関心のあることは大きくとらえ、反対に自分の考えや予測にあわない部分はことさらに小さく見る傾向のことです。(中略)

(5)極端な一般化
これはごくわずかな事実を取り上げて物事も同様に決めつけてしまう状態です。(中略)

(6)自己関連づけ
自分の責任を大きく感じすぎて、少しのミスで自分を責めてしまうような態度です。(中略)

(7)情緒的な理由づけ
そのときの自分の感情状態から現実を判断するような状態です。(中略)


・楽しみの時間を作り出す

うつ病になると、いつも以上にきまじめで几帳面になるために、なかなかゆっくり休むことができません。何もしないでいると自分がまるでダメ人間になったかのように感じますし、ほかの人に迷惑をかけて悪いという気持ちも働きますから、つらくても、無理をしがちです。


・うつ病というのは、心と体を休めるようにという警戒信号です。それを無視するとけっして良いことはありません。その警戒信号をまず受け入れることが大切です。


・もし、朝早く目が覚めるようなら、思い切って起き上がって少し体を動かしてみるのもひとつの方法です。


・光を部屋に入れることも大事です。(中略)朝起きられなくて学校に行けない子どもたちの場合も、ベッドの頭の方を窓際において、朝の決まった時間に音楽を鳴らしながらカーテンを開け、朝の光を浴びるようにすると、起きられるとうになる場合がよくあります。


・人づきあいが楽になるヒント(中略)

(1)自分をもっと認める(中略)

(2)他の人のことをもっと認める(中略)

(3)問題点は何かを具体的に考えてみる(中略)

(4)完璧な人間関係はない(中略)

(5)意見の食い違いを恐れすぎない(中略)

(6)言いづらいこともしっかりと伝える(中略)

(7)言葉に頼りすぎない(中略)

(8)思いこみから自由になる(中略)

(9)思い切って自分流を捨てる(中略)

(10)困ってもよい


・患者さんによっては、抗うつ薬を飲むと人間が変わってしまうのではないかと心配する人がいますが、抗うつ薬にはそれほどの力はありません。脳の中の化学物質のバランスの崩れをもとに戻すだけです。


・薬物療法の助けがなければ心理的治療の効果が半減しますし、薬物療法の効果を充分に発揮するためには心理的側面への治療が不可欠です。


・抗うつ症状が軽いからといって、抗うつ薬が少なくすむというわけではありません。むしろ、少ない量を漫然と処方し続けることによって、症状が慢性化することもありえるのです。


・抗うつ薬の効果が現れ始めるまでには二、三週間かかります。


・抗うつ薬による治療は、三段階に分けて行います。症状が続いている間は急性期の、そして症状が消えて気分が安定した段階では維持期の治療を行います。急性期には効果と副作用を見ながら、徐々に抗うつ薬を増量し、最大限の効果が出て寛解状態に入ったところで、その投与量を維持するようにします。


・うつ病の患者さんに接するときには、原因を追及しすぎないようにすることも大切です。うつになった原因がはっきりしている場合にはそれを解決していくことが役に立ちますが、原因探しは悪者探しになることが多いので注意しなくてはなりません。


・高齢者の自殺に関する調査では、単身者よりもむしろ家族と同居している多世帯の高齢者の自殺率が高いという結果が得られています。それは、単身者の場合には周囲の関心が向きやすくさまざまな援助が受けられるの対し、多世代家族では家族関係が悪化したときに高齢者を援助するシステムを作りにくいからだと考えられています。


・ベック質問紙


●書籍『「うつ」を治す』より
大野 裕 著
PHP研究所 (2000年4月初版)
※amazonで詳細を見る