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東京メトロの駅ナカに図書館ではありませんが、「メトロ文庫」と呼ばれる本棚があります。誰でも、無料で断りなく借りることのできるものです。
かつて、東京メトロに27駅にこの「メトロ文庫」があったもので、現在は残っているのは5駅だけ。1980年代後半から地域交流を目的に進みましたが、駅の改修や利用減少を理由に姿を消していったものです。
現在ある駅の1つに「根津駅」があります。朝日新聞2013年2月12日号に詳細が紹介されていますので、ご紹介いたします。
根津駅 (東京都、東京メトロ千代田線)
※写真は、仁藤 雄三 撮影
通勤ラッシュが一段落し、ほっとした空気が流れる改札口。窓口の駅員に、女性が遠慮がちに紙袋を手渡す。駅員が事務室の奥に入っていくと、女性はすっと立ち去った。紙袋の中には小説の文庫本が20冊ほど――。東京都文京区の根津駅では珍しくない光景だ。本はやがて「根津メトロ文庫」の印を押され、ホームにある電車の形をした本棚に並べられる。
東京メトロにはかつて27駅に文庫があった。地域交流を目的に1980年代後半から設置が進んだが、やがて駅の改修や利用減少を理由に姿を消していった。今も残っているのは5駅だけだ。
中でも根津駅は本棚に500~700冊、在庫が約千冊と格段の蔵書数を誇る。利用客や近くの学校などからの寄付に支えられて、四半世紀近く親しまれてきた。場所柄、西村京太郎や内田康夫らの「旅情ミステリー」が目に付く。
利用方法がわからずにまごついていると、「本棚から借りて、返却棚に返すだけだよ」と60代の男性が教えてくれた。10年以上ほぼ毎日、通勤の途中に立ち寄るという。「来るたびに置いてある本が変わっている」。時代小説を主に「1年で620冊借りた年もあった」と笑う。
週に2、3度、文庫の掃除をする駅清掃員の加藤典夫さん(61)によると、利用するついでに棚の本を整理していく人も。「汚すなんて人、本好きにはいないでしょ」。だから、掃除は「から拭きで十分」なのだそうだ。
文 横田麻生子
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