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[ 出版社について ]

幻冬舎における「ミリオンセラーの方程式」

「ミリオンセラー」その名の通り、出版業界では 100万部以上の売上げを達成した本のことを指します。著者や編集者であれば、一度は出してみたいと考える方が多いのではないでしょうか。


しかし、実際は年間に約 7万冊出る新刊の中で、数冊出る程度のが現状です。2012年度は、『聞く力』(阿川 佐和子 著・文藝春秋 刊)の 1冊だけでした。


そんな状況の中、創業してからの 20年間で 17作品をミリオンセラーを世に送り出した出版社があります。幻冬舎です。その幻冬舎はどのようにして、ミリオンセラーを出したのでしょうか。出版業界紙「新文化」 2013年 3月 7日号に、「幻冬舎 ミリオンの方程式」が紹介されています。興味深い内容なのでご紹介したいと思います。
 

幻冬舎 ミリオンの方程式

2時間の売行きで10日間の実売算出


渡辺和子『置かれた場所で咲きなさい』と東野圭吾『プラチナデータ』がほぼ同時にミリオンセラーとなった幻冬舎。「出版は水もの」といわれる業界だが、創業して20年の間に17作品をミリオンにした実績は特筆に値する。


しかし、書店から「出版社のなかで本が一番入手しにくい」といわれる同社が、なぜこうも大ヒットを連発できるのだろうか。


編集による本の力が最大の理由であることは言うまでもない。が、その裏にはデータに裏付けされた営業力がある。

同社営業局には、150法人で約4500書店におよぶ特約店制度がある。その組織は「Sランクの20店」を頂点に、「Aランクの30店」「Bランクの450店」、そして「Cランクの4000店」からなる。その売上シェアは78%という。


Sランクには営業担当が出向いて行う新刊会議から、Aランクにはファックスから事前注文をとり指定配本。以下の特約店には同社のランクに従って配本する。特約店以外の書店は取次会社に委ねているというのがおおよその仕組みだ。


「市場にある本を切らさないこと」―これが作家と広い交友関係をもち、カリスマ的な存在である見城徹社長が、営業局に指示する絶対的なミッションだ。メディアへの広告やパブリシティの翌日には中3日で出荷するための重版を決める。


「午前中2時間の店頭売行きから10日間の実売数を算出する」独自の方程式から重複した部数を決め、「中3日」で重版分を出荷できる出版社は、業界のなかでも極めて珍しい。と同時に、それを市場にどう投入していくかが問われる。同社の特約店はそのスピードに対応するための仕組みであると言っても良い。


ミリオンのタイトルには、著名な作家やタレントが目立っているが、そうでない著者のものも少なくない。知名度の高くない商品を書店店頭で火をつけ、ヒット商品に変える。これも営業局に課せられた命題である。


ミリオンとなった『ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本』『キッパリ!』『バンド一本でやせる!巻くだけダイエット』は、発売当初、マスコミに取り上げられる機会も少なかった。店頭での仕掛けから売れ始めたタイトルである。


限られた書店への出荷について、花立融取締役は「悩みに悩んで、悩んで、決めたこと」「もっと努力して、精度を高めて、すべての書店を満足させたい」と表情を強張らせる。なかには思うように売れず、また悩む時もある。それでも13人の営業スタッフで実績をつくった。17作品をミリオンにしたのは〝マグレの連続”じゃない。


そもそも、特約店制度は創業した1993年にはできていた。当時から比べ、販売データによる営業は進化した。昨年3月期決算時、同社の返品率は20%台後半だった。


さらに同社の営業3部には、「出版経理」業務がある。日々受注している書店注文から伝票を作成し、売上げを算出・管理しながら、取次会社への請求書も発行する。他の出版社にはない営業の基盤が幻冬舎にはある。


(本紙・丸島 基和)


※出版業界紙 「新文化」 2013年3月7日号より
「新文化」のウェブサイトはこちら