このページは、書籍『「激安」のからくり』(金子 哲雄 著、中央公論新社 刊)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。
・激安ジーンス(中略)
A社の880円ジーンズを例に挙げますと、37%前後の利益を出していると言われています(多少推定も含めています)。880円の37%なので、326円くらいが儲けになっているのです。残りの554円が減価となります。(中略)
一番コストがかかったのがは何(中略)「生地代」でした。554円のうち、半分が生地代だというのです。これが277円となり、残り277円が縫製や物流などで発生するコストと考えられます。これには人件費も含まれます。(中略)
つまりコストを積み上げた方式で決めた値段でなく、消費者希望価格方式(重要分析方式)で価格は決められるわけです。
・世界中の流通過程にある余り物を集め、空いている工場のラインを活用することで900円台を実現しているのです。このような低価格化を「寄せ集め型低価格戦略」と筆者は名付けました。
・百円バーガーのからくり(中略)
マクドナルドのやろうとしたことを簡単に申し上げますと、ハンバーガーを100円で販売することで客数を増やし、ドリンクなど、ハンバーガーよりも利益率の高い商品を「ついでに」購入してもらうことにより、買上点数を伸ばし、売上・利益ともに確保しようという作戦です。
・百円ショップの賢い利用の仕方(中略)
まずスーパーへ行き、100円以下で買えるものを買います。そのあと百円ショップへ行き、スーパーで買えなかったものだけを、そこで買いなさい(中略)
スーパーでも100円以下で買えるものは増えてきたのです。
・スタイリストさんなどに聞くと、同じ値段のスーツであっても、体型にマッチしたスーツを着用していると値段相応もしくは高い品に見え、体型にマッチしていないスーツを着用していると、たとえ数十万円する高級なスーツであっても安っぽく見えます。
・2万9800円パソコンのからくり(中略)
部品メーカー同士、競争させることで、より高品質・低価格を実現しようとしているのではないか、と推測されます。
・外食でなく「中食」(中略)
たとえば、「なだ万」で外食したいけど、「なだ万」は高いと感じた人がいるとします。そこで、デパ地下へ行って、「なだ万のレシピによる、出来合いのもの」を買って、家で食べるわけです。これが「中食」。(中略)「なだ万」にとっても決してマイナスではないはずです。ビジネスが広がっていくわけですから。
・魚の値段のからくり(中略)
水産庁の関係団体の資料によるろ、店頭価格の4分の1が漁師の手取りになっています(中略)残りの4分の3は何かというと、仲買などの流通コストなのです。(中略)
仲買人というのは、漁師から魚を買ってスーパーなどが欲しがっている魚と捕れた魚を調整する役目があります。この仲買人が日本の鮮魚流通のおいて力を持っている
・ハーレー・ダビットソンの売上の4割は、アパレルによっているのです。オートバイに乗るための皮ジャンなどを作って売っています。
・PBの定義(中略)商品の販売元として、小売業者の名前のみ、明記されたものをPBと呼びます。一方で、小売業者の名前とともにメーカー名も併記している場合もあります。こちらは「ダブルチョップ」と呼ばれています。セブン&アイの「セブンプレミアム」が、ダブルチョップ。
・販売業者名のみ明記する流通業のおけるPBの開発は、NBとPBが共存し、NBの価格帯体系を維持するためにも製造者名を明かさないという方針なのです。
・H&MやFOREVER21は、原則として1回しかその商品を作らないと言われています。たとえば、シャツを1000枚作るとすると、それがいくら売れようがそれ以上作らないのです。(中略)限定モノということです。
・アパレル業界の関係者によると、「あら、いい服着ているね」と言って、洋服の生地を触るのは、実は世界中でも日本人と韓国人くらいだそうです。だから、生地の材質より、見た目の色やデザイン性を重視することになります。
・基本的にはどのアウトレットモールも、「5年間はテナントの入れ替えなし」といってはいるのですが、毎年四半期ごとに、全部のテナントにおける売上の順位を出しています。そして、3期連続下位のテナントには、入れ替えのレッドカードが出されています。それと同時に、次のテナント募集もたえず行っているのです。
・フロントライナー 中内功(中略)
中内は、メーカーが「いくらで売りたい」ということで形成された価格ではなく、あくまで「消費者がこれなら買える価格」という価格にこだわりました。「消費者が買える価格」で売れるような薬を入手すればいい。たとえば、いま15円出さなければ買えないものを、8円で買えるようにすれば、庶民にも手が届く。そう考えた中内は、8円で買える薬を求めて、全国を歩いてまわりました。これが安売り哲学の原点なのです。
・現在では各社がプライベートブランドを出していますが、その先駆けはやはり中内功でした。
・ダイエーはいくつもの革命を行いましたが、そのひとつに、「返品なし」があります。中内は当初、すべての商品を「買い取り」にしました。返品をしない、つまり店舗の販売力ですべて売ってしまう、という宣言のようなものです。中内は販売力だけで店舗を拡大していったのです。これは本当に流通革命といっていいでしょう。
・合理的にやるすぎると……(中略)
ファストファッション業界は黒、紺、白の商品が売れ行き80%を占めています。赤、、黄色、緑、ピンクなどは「売れない商品」です。だったらそれらを排除すればいいかというと、違うのです。赤、黄色、緑、ピンクなどは「差し色」といわれて、黒、紺、白を映えさせるための色。これらの商品を置かなければ、黒、紺、白も目立たなくなって、売れなくなってしまうのです。
・みなさんは、ワイシャツやキャラメルが再販価格支持商品だったことを知っていますか。ある年齢以上の人はかすかに記憶があるかもしれません。(中略)
再販制度はいわば価格統制的な政策で、戦後社会の経済自由化のなかで、徐々に廃止されていくのは必然の流れでした。
・97年3月に化粧品の安売りが認められたことによって、ドラックストアが急速に伸びてきます。再販制度が廃止されると、その商品の量販店が伸びるというのは、ごく基本的な現象です。
・ユニクロは東京に来たとき、最初は比較的郊外から攻めていったのです
・ユニクロ(中略)山口県の小規模な衣料品販売店が、自分たちで商品を企画し、製造委託し販売しようとしたことが、業界内外で驚かれたようです。
・ユニクロですが、柳井正はまず、中国地方で集中出店をしました。各国道路ごとにユニクロという店を出店したのです。それによってお客さんを集めます。そしてある程度のスケールメリットを計算できたときに、今度は生産拠点を中華人民共和国に設定し、現地の工場に発注していったのです。
・カーギル社は独自で人工衛星を持っていて、(中略)この衛星を24時間態勢で飛ばすことで、世界のどこで小麦が豊作とか、どこで刈り取りが終わったかなどをチェックします。そこの相場が安くなるところを狙い、一気に買い付けをする、そうしたことをやっているのです。大手ファストフードチェーンの世界展開を支援したのがこのカーギル社であり、「ファストフードのバックボーンにはカーギル社がついている」といわれています。
・「深夜、体調が悪いので、なんとか薬を売ってくれないか」という客からの要望があるのに、なぜ、国は止めさせようとするのだろうか?ここで安田隆夫との反骨精神が発揮されました。結局は後年、厚生労働省が規則を改正し、テレビ電話による薬剤師の販売が認められるようになりました。
・激安時代といわれる21世紀。自社社員を使って作っていると、採算が合わなくなります。大手企業のブランドの信用力を使い、実際は中小零細企業で作るといのは、「よくある話」なのです。こうして、ナショナルブランドとはいっても、実態はそうともいえない商品がたくさん出回ります。
・安売り店の見分け方(中略)
チェックポイントは「ゴミ箱」です。ゴミ箱がちゃんと設置されており、ゴミ箱からゴミが溢れていない(つまり、店側がたえずゴミ処理をしている)お店は、「よいお店」と筆者は判断しています。(中略)
「入り口や売場がきれいにされている」。単純なことですが、従業員の目が行き届いているか、店のチェック態勢が整っているか、などを明らかにする指標(中略)
もうひとつは、「欠品」です。店内に入り、商品を見渡してみたとき、欠品が多いお店というのは、発注精度が低い証拠。これがシステム的な安売りではありません。
・引く手あまたの部屋(中略)
「山の上ホテル」です。ここは作家が常宿にすることで有名ですが、「○○が宿泊した部屋」とか、「直木賞を受賞した○○が受賞作を執筆した部屋」みたいなところが、かなりあるのでしょう。
・やはり名声が欲しい?(中略)
マーケットシェアを取ると、今度は、「激安のままでは、かっこわるい」と経営陣が思ってしまう。それで「エスタブリッシュメント」になろうとする。するとどうでしょう。もう「激安でもなく、高級でもなく」になってしまいます。
・安いジーンズが買えて、消費者にとってはけっこうな話なのでかもしれませんが、一方で日本の産地が破壊され、失業者が増えていきます。そうなると、商品の購入価格が下がったのはいいですが、家族の収入も減っていき、ものが買えなくなってします。これが「激安スパイラル」です。
●書籍『「激安」のからくり』より
金子 哲雄 著
中央公論新社 (2010年5月初版)
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