このページは、書籍『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』(飯田 一史 著、青土社 刊)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。
・ほとんど文庫で刊行されるライトノベル市場は二〇一〇年には三一六億円(矢野経済研究所調べ)。ようするに、売上が立った文庫本の四、五冊に一冊はライトノベルである。
ライトノベルの価格は一刷五〇〇円~六〇〇円だが、年間三〇〇億円市場とは、一冊六〇〇円だとすれば、五〇〇〇万冊売れていることになる。
ライトノベル業界では、コアな読者は五万人とも一〇万人とも言われているようだ------が、仮に五万人しか読者がいない市場なら、ひとり年間一〇〇〇冊買わなければ五〇〇〇万冊市場にはならない。
仮に月に一〇冊買うヘビーユーザーが一〇万人いたとしても一〇冊×一二か月×一〇万人=一二〇〇万冊。のこりの三八〇〇万冊は、広く薄く買われているはずである。
・ベストセラー・ライトノベルに共通する要素
大ヒットしているライトノベルには、共通する要素がある。「楽しい」「ネタになる」「刺さる」「差別化要因がある」(他では読めないという固有性がある)という読者の四大ニーズを満たすこと。これらは読者側の要求であり、これに応えなければならない。
・作家に求められる三つの要素(中略)
ライトノベル作家に求められるものとは何だろうか。
第一には、スピードである。(中略)ほかのコンテンツに目移りしないように読者のニーズを高速で満たしてくれる作家でなければいけない。(中略)
第二には、パッションである。どのベストセラーシリーズも、「この作品が好きでたまらない!」「(締め切りは大変だけど)楽しんで書いてます!」という雰囲気が伝わってくる。(中略)
第三には、オタクであることだ。
・オープニングの実例を示し、そのねらうをいくつか開示する。
(1)できるだけ早く読者の心をつかむ
(2)主人公を早く紹介する
(3)この作品がどんなタイプの小説か知ってもらう
・▼キャラの魅力演出の3ステップ、ギャップ理論、キャラクター・マトリックス
藤子・F・不二雄『ドラえもん』に出てくるジャイアンは、のび太をいじめるひどいやつだが、先生と母ちゃん、妹のジャイ子対してはめっぽう弱いという部分をもち、さらに大長編(劇場版アニメ)では「いいやつ」になる。劇場版の視聴者は、そこにグッとくる。
・フィクションのキャラに限らず、人間はギャップに弱い。
・ライトノベルにおいて良いキャラとは、
●スペックと内面のギャップが激しいこと
●時間経過による変化、成長ギャップがあること(過去 - 現在 - 未来ギャップ)
の2つを兼ね備えたキャラクターである。
・▽キャラクターの魅力演出のための3ステップ
より、原理的に言えば、キャラクターの魅力は、
1 属性の提示------登場時点~序盤において
2 多面性の提示------序盤~中盤において
3 時間経過に伴う変化/成長の開示------中盤~終盤において
で演出できると考えられる。
・▽想いが「届かない」ことが「切なさ」を生む(中略)
届けたいと考えている、ひとの想いが、届かないことが切なさを生む。(中略)そもそも、ある人間が強い願望(desire)や意思(will)を持って何か目指している状態に、目的や目標をもって生きている様子に、ひとは惹かれるものだ。そのエネルギーに感化されもする。
・キャラクターデザインも、ストーリー上の「転」から逆算して、どんな姿をして登場させれば「転」が活きるかを考えてつくる必要がある。意外性のある「ベタ」(王道展開)をうまくつくるために、たとえば(中略)敵対する「悪人」(中略)バトルに敗北したのち、(中略)「いいやつ」に変化する。
・いいものをつくれば売れる、わけではない。売れるものはますます売れ(売れるレーベルはますます売れ)、売れないものをますます売れなくさせるという二極化をうながすようなシステムが走っている。
・書店の経常利益率は良いときで一%台、ここ数年はマイナスになっており、ほとんど儲からない。書籍や雑誌だけで商売するのは、もはやリスキーである。
・Q&A
細かい話や疑問に答えます(中略)
・「本は一度しか買わない」? 同じ本は一度しか買いませんが、シリーズの続きものという意味では、その巻がおもしろければ、同じ著者の同じ作品の次巻を買い続けます。(中略)
シリーズものとそうでないベストセラー作品は、分けて考えるべきです。
・再版制が崩れれば、バイイングパワーが大きく、売れ筋を読むことに長け、顧客セグメントを絞るチャンネルが、それぞれのセグメントで強くなる。オタク専門店や複合店がますます伸び、泡沫レーベルの本は発注されなくなり、さすがに多少の淘汰が進むだろう。
●書籍『ベストセラー・ライトノベルのしくみ~キャラクター小説の競争戦略』より
飯田 一史 著
青土社 (2012年4月初版)
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