このページは、書籍『キャラクター小説の作り方』(大塚 英志 著、講談社 刊)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。
・小説家になることが「私探し」と密接に結びついてしまったのは、この国の「文学」が大なり小なり「私小説」という伝統の上に成り立っているからです。そして、小説家志望者たちが小説家にうまくなれないのは「私探し」と「小説を書く」という行為をうまく区別できないからのように思えます。
・「このままの書き方を続けていれば、いつまでも一次選考は通らないだろう」と編集部が考えた作品に共通の問題点が六つ指摘してあります。
①オリジナルティが欠けている
②構成が破綻している
③描写と説明の区別ができていない
④設定への考察が足りない
⑤よくあるキャラクターを安易に使う
⑥世界観とキャラクターが合っていない
・ぼくの作るキャラクターは基本的に全て先人の作品に元ネタがあります。この際だから一挙に告白しておきましょう。
・キャラクター作りの発想法(中略)いくつかのポイントがあります。まず一つは元ネタのキャラクターを一度、抽象化する、という手続きです。名前や年齢や性別やキャラクターが属する「世界観」を全てとっぱらっていって「七つの顔を持つ探偵」であるとか「頭がスケルトンの男」といった程度のキャラクターの固有性が消滅するレベルにまで抽象化します。その上で、そこに改めて元ネタとは全く異なる外見や性別や名前や時代背景を与えてあげればいいわけです。
・キャラクターを作る上でのポイントはこの主人公の外見上、設定上の個性がドラマの根幹ときちんと結びついているか否かにあります。
・キャラクター作りの三つの水準(中略)
①キャラクターの基本型を決定するパターン(中略)
主人公は主人公らしい、悪役は悪役らしいパターンの顔をしている(中略)
②髪型・服装・小道具等でキャラクターの性格付けを具体化するパターン(中略)
アトムなら尖った髪の毛、長いブーツといった要素がこれです。(中略)
③キャラクターを演技させる時のパターン(中略)
驚くとキャラクターが飛び上がる、なんているのもパターンの一例です。
・野島伸司は昔のコミックのキャラクター作りのパターンをドラマに持ち込むことに巧みな脚本家で、「フードファイター」は『タイガーマスク』のキャラクター作りのパターンをそっくり流用したものです。
・キャラクターは「壊れ易い人間」であり得るか
・「プロジェクトX」は、大抵それまで日本にはなかった新しい商品や社会性などの必要性に気づいた人たちが、それを達成するのに必要な難題を解決するというパターンです。例えば日本で絶滅しかけたトキを苦労の末、人工繁殖に成功しトキが日本に甦った、などという回も先日放送されていました。
あれれ、それってさみのもんたの「貧乏大作戦」の構成と似てない?(中略)お店が上手くいかなくて、番組からこのお店で新しいレシピを覚えろと言われて、苦労の末、修得してお店を新装開店、お客さんがたくさん来て貧乏脱出、というパターンです。(中略)
この二つの番組に共通のパターンを少しだけ抽象化してこんなふうにまとめてみましょう。
1.何かが欠けている(お金がなかったり、救急医療制度がなかったりという状態)
2.課題が示される(新しいレシピを覚える、今の技術では治せない患者さんが出現する)
3.課題の解決(レシピや治療法を身につける)
4.欠けていたものがちゃんとある状態になる(お金が入ってくる、救急医療が確立する)
・ぼくが子供だった昭和三〇年代には手塚治虫のまんがは「有害図書」の象徴的存在でした。それこそ手塚治虫は身体を張って「まんが」というジャンルを作り上げてきたのであって、その恩恵を受け取ることで僕たちの現在があるわけです。
・小学生のものであったアニメに一〇代半ばの視聴者がついたのは「ヤマト」が初めだと思われがちですが、実は「トリトン」が最初です。
※補足:「トリトン」とは、「海のトリトン」のこと。
※手塚プロダクションのウェブサイト内にある「海のトリトン」のページを開く
・「キャラクター小説」とは、出版界においてライトノベルズ、ジュニア小説、ティーンズノベルズ、ジュヴァナイル、ヤングアダルトなどと呼ばれていつつ、もう一つ「総称」が定まらない小説ジャンルのことを意味します。具体的には「スニーカー文庫」とか「電撃文庫」とか「コバルト文庫」とか、アニメコミックふうのカバーで刊行されている文庫本の小説を言います。
●書籍『キャラクター小説の作り方』 (講談社現代新書)より
大塚 英志 著
講談社 (2013年10月初版)
※現在は、「講談社現代新書」ではなく「星海社新書」として発売されているようです。
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