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木下 是雄 氏 書籍『理科系の作文技術』(中央公論新社 刊)より

このページは、書籍『理科系の作文技術』(木下 是雄 著、中央公論新社 刊)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。


・明快に書くためのその他の心得として、ここでは次の三つをあげておこう。

(a)一文を書くたびに、その表現が一義的に読めるかどうか------ほかの意味にとられる心配はないか------を吟味すること,

(b)はっきり言えることはズバリと言い切り、ぼかした表現(……といったふうな,月曜日ぐらいに,……ではないかと思われる,等々)を避けること,

(c)できるだけ普通の用語,日常用語を使い,またなるべく短い文で文章を構成すること。


・書くことに慣れていない人は、誰が読むのかを考えずに書きはじめるきらいがある。(中略)読者が誰であり、その読者は何を期待し、要求するだろうかを、十分に考慮しなければならない。


・文章の組立て(中略)

序論で問題を示して、その背景とどうしてその問題を取り上げたのかを説き、つづいて実験の方法とその結果(理論の論文であれば仮定とそこからの演繹)を記述する


・事実か意見か(中略)

事実とは、証拠をあげて裏付けすることのできるものである。意見というのは、何事かについてある人が下す判断である。ほかの人はその判断に同意するかもしれないし、同意しないかもしれない。


・新聞を読み、雑誌を読むたびに、「どこまでが事実か、どこからが意見か」を読みわける努力をしてみて頂きたい。


・事実のもつ説得力(中略)


意見だけを書いたのでは読者は納得しない。事実の裏打ちがあってはじめて意見に説得力が生まれる。事実の記述は、一般的でなく特定的であるほど、また漠然とした記述でなくはっきりいているほど、抽象的でなく具体的であるほど、情報としての価値が高い。また読者に訴える力が強い。


・まぎれのない文を(中略)

例1 黒い目のきれいな女の子(がいた)


これが8通りに読めることはロゲルギストI2氏の分析のとおりである(中略)

(a)黒い目の,きれいな,女の子
(b)黒い,目のきれいな,女の子


・漢字の使い方について私が気をつけていることの一つは〈漢字だけで書くことば〉をベタに二つ続けるのは避けること(中略)


   比較的少ない。


とは書かず,(中略)


   比較的すくない


と書くのである。


・辞書(中略)

私の知るかぎり、作家と呼ばれる人たちの座右にはいつも何種類かの辞書が置いてあるらしい。書くことを一生の仕事とする以上、ことばを厳しく吟味し、字を確かめるのは当然の心掛けだろう。


・私は長いあいだ『広辞苑』を使っていたが,2年前から『学研国語辞典』にとりかえた。この辞書は,ことばの意味を,単なる言いかえによって示すのではなく内容的にちゃんと説明しようと努力している点,また用例が豊富な点がいい。


・事実と意見をはっきり区別して書くこと。特に事実の記述のなかに意見を混入させるな


・謝辞は(中略)本人の諒解をえた上で書く(ここに名前をあげられた人は,その論文またはその一部に対して多少とも責任を負うことになる)。


・「あの人の話は歯切れはいい」といわれる人の講演は、次の三つの条件をみたしているのだ。

(a)事実あるいは論理をきちっと積み上げてあって,話の筋が明瞭である。
(b)無用のぼかしことばがない。
(c)発音が明瞭


●書籍『理科系の作文技術』より
木下 是雄 著
中央公論新社 (1981年1月初版)
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