このページは、書籍『知っておきたい認知症の基本』(川畑 信也 著、集英社 刊)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。
・認知症は二人の病者を生み出します。一人は患者さんご本人であり、もう一人は介護をするご家族です。上手な介護、適切な対応は、患者さんばかりでなく介護をするご家族の救いとなることも強調したいと思います。
・認知症の特徴(中略)
1 一度獲得された知的機能がなんらかの原因によって低下すること
2 低下した知的機能によって社会生活や家庭に支障をきたすこと
3 意識障害がみられないこと
の三点を特徴とする病態です。
・物忘れイコール認知症ではありません。認知症と診断するには、物忘れ以外に、日時がわからない(時に対する見当識障害)、出かけると迷子となる(場所に対する見当識障害)、買物でお金の計算ができない(計算障害)、衣服を上手に着られない(失行症)、他人との会話がかみ合わない(失語症)など、その他の認知機能障害が一つ以上加わることが条件とされています。記憶障害だけが見られるときには健忘症と診断されます。
・認知症とアルツハイマー病は同じではない(中略)
認知症とアルツハイマー病との関係を正確に述べると、アルツハイマー病という病気(原因)によって、認知症という症状(結果)が起こしているのです
・認知症を診断する手順として、
1 患者さんの日常生活をよく知るご家族や周囲の人々からの詳細な病歴(病気の経過)聴取
2 患者さんに対する問診と診察
3 簡単なテスト式認知機能検査
4 脳の形態画像検査
の四つのステップが少なくとも必要となります。
・季節を間違える場合は、認知症の可能性が高くなります。健常者では、日時や曜日をうっかり間違えても季節を間違えることはまずありません。私たちは、周囲の状況や体感から、意識しなくても季節を感じながら生活しているからです。
・現在の季節を尋ねることは、認知症の有無を判断するうえで重要です。
・アルツハイマー病にみらせる早期微候は以下の四つになります。
1 物忘れ(記憶障害)
置き忘れ、しまい忘れ、大切な約束事を忘れる、定期的に服用すべき薬の飲み忘れ、同じ物を何回も買ってくるなどの微候。
2 日時の概念が混乱してくる(時に対する見当識障害)
何回も日時や曜日を聞いてくるようになった、慣れ親しんでいるはずのお稽古事の曜日を確認するようになったなどの微候。
3 怒りっぽい(易怒性)
些細なことですぐに怒る、以前はおとなしい性格だったのがこの頃怒りっぽくなった、ちょっと注意するとものすごい剣幕で怒るなどの微候。
4 自発性の低下、意欲の減退
長年慣れ親しんだ趣味やお稽古事に関心がなくなった、一日中、テレビを眺めている、新聞やテレビをみなくなった、家でうとうとしていることが多い、外出しなくなった、親しい友人との付き合いをしなくなったなどの微候。
・上手な介護、適切な対応の原則は次の三つです。
1 「認知症は病気である」という認識をご家族や周囲の人々がもつこと
2 患者さんが生活しやすい環境作りを最大限行うこと
3 認知症介護に完全さ、完璧さを求めないこと。ベストの介護よりもベターの介護をめざすこと
・認知症は病気である(中略)
ご家族の方にとっては一一回目の質問でも、患者さんになかでは一回目の質問なのです。(中略)
『何回聞いたら気がすむの!』『さっき、答えたでしょ!』と言われたら、患者さんは、心のなかで“自分は、夕ご飯を食べようと思って聞いているのに、なんで怒られるのだろう。変だな、なんで食べさせてくれないのだろう、きっと、自分に夕ご飯を食べさせたくないから、こんなに怒るんだな”などと考えるようになります。そこから、疑い深くなる、暴力を振るう、隣人に家族の悪口を言いふらすなどの行動にでるかもしれません。周囲の人が患者さんの世界を推測し対応することが大切なのです
・残念ながら現在、認知症では、一度失われた機能を取り戻すことは大変にむずかしいのです。できなことを無理強いして行わせようとすると、認知症はますます進行・悪化することを忘れないでください。
・認知症を診断された後、ご家族が行うこと(中略)
1 介護保険の認定申請(中略)
2 有能なケアマネージャーをみつけること(中略)
患者さんの立場で活動することは当然ですが、筆者が望ましいと考えているのは、機動力に優れた気配りのできるケアマネージャーです。
・よいケアマネージャーの条件は、患者さんに必要な事柄を中心に考えて仕事をてきぱきこなせるか否かである
・ドネペジルの効果(中略)
筆者は、現在まで四五〇名以上の患者さんにドネぺジルを投与していますが、重大な副作用を経験したことはありません。
●書籍『知っておきたい認知症の基本』より
川畑 信也 著
集英社 (2007年4月初版)
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