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[ 出版業界について ]

取次別 2015年3月期決算  寄稿:冬狐洞 隆也 氏

総合取次で中堅の会社「栗田出版販売」が、2015年6月26日(金曜日)東京地裁に民事再生手続きの開始の申し立てを行った。


出版業界からは、他の取次は大丈夫なのかといった声も聞く。そこで、2015年における取次3社の営業利益と経常利益、純利益、書店数から今後を紐解きたい。取次3社の決算を紹介する。
 

 
日販
前年比
トーハン
前年比
大阪屋
前年比
売上高
661,096
▲3.1
495,132
▲2.7
68,100
▲11.0
営業利益
2,588
▲45.5
6,257
-
689
営業損失
経常利益
3,626
▲31.1
3,912
1.1
738
経常損失
純利益
1,052
▲53.8
1594
▲16.6
2,240
-
書店数
4,315店
▲115店
4845店
287店
698店
▲412店

※単位(百万)
 
 

トーハンの儲けがダントツ

取次3社の決算を表にしたものである。日販・トーハンは連結決算の数字。トーハンの儲けがダントツになっている。日販系のMPDの売上は 1925億円前年比3.4%の減少で3期連続のマイナスとなった。CD・DVDを含めた複合書店の衰退は時代の流れか。


取次各社とも取引書店の移行と転廃業の結果と考える。ただ、書店の売上が上がらなければ取次の売上も増加するわけが無く、この先も更に不透明になっていくだろう。日本書店組合連合会の組合員も 3,981店となり 4,000店を割ってしまった。消費税が 10%に課税されたら、何店の書店が無くなるだろう。


大阪屋は本社の売却と 37億円の増資により昨年の 56億円の債務超過は解消した。しかし、売上も減少し、営業損失・経常損失で書店数も大幅なマイナス。2016年3月も厳しい経営となってくる。


取次を経由していない出版物の売上がある

出版社の消費者直販とKADOKAWAを中心とするアマゾン・ジャパンとの出版社 直取引 売上が益々、取次の売上を減少させていると考える。


この資料を作成している時に取次業界4位の栗田出版販売が民事再生法を東京地裁に申請したとの一報が入ってきた。負債総額13億円・債務超過約29億円。銀行借り入れはゼロとの奇妙な民事再生法の申請である。何かの意図があるとしか思えない。


民事再生法で再生できる会社は、民事再生法でなくとも再生できることが真実。実際、殆どが1年後には倒産しているというのは弁護士の話。本来、本業で赤字が続いている会社で、リストラを行っても利益のでない会社は、民事再生法で再生の許可を受けてもほとんど意味が無いとの話でもあった。大阪屋と栗田が 1年後に統合できるかどうかは神様だけが知っている。


 
寄稿 : 出版流通コンサルティング 冬狐洞 隆也 氏