このウェブサイトにおけるページは、書籍『面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集の仕事目録』(三木 一馬 著、KADOKAWA 刊)を読んで良かったこと、共感したこと、気づいたこと、こんな視点もあるといった点などを取り上げ紹介しています。
・『送り手側がジャンルを縛る』のは、読者の自由を制限しているような気がしますから、とにかく、面白そうなものやドキドキワクワクするものを楽しくつくる、それが一番大事!
・想定読者とは、自分が一番届けたい、読んでもらいたい相手のことです。何歳で、どんな人で、どんな生活を送っていて、どんな趣味を持っていて、いつ本を読むのか、学校や職場でどんな立場なのか。そして、この作品に触れた時、どんな気持ちになるのか------。
・想定読者というのは、想像上の『誰か』ではなく、自分のよく知る特定の人物でかまわないのです。アイツだったら、こういう展開こそ燃えるはず! アイツだったら、確実にこのヒロインは惚れるな。
・高橋弥七郎さんという作家は、「本を出させてもらう以上は、きっちりと読者にも出版社にも恩返しする」という考え方を持つ仁義の人でした。出版社は一冊の本を出すのに、数百万円の費用をかけています。
・作家の鎌池和馬さんもまた凄い人物で、ネット上ではいくつもの『伝説』が語られています。(中略)
⑪執筆の息抜きは、別の原稿の執筆である。
・共感とは、文字通り喜怒哀楽を共にすることです。たとえば、なんらかのピンチに主人公が巻き込まれているとして、それを読者がショーウィンドウの向こう側から見ているか、当事者として主人公キャラと肩が触れあうくらいの近さで体感しているかで、受ける印象がまったく違います。
・共感を抱けるキャラは、必ず『憧れ』と『愛嬌』を感じさせます。この二要素は、「どちらか」ではなく「どちらも」兼ね備えていることが理想です。
・プラスの面とマイナスの面、両方があると、そのキャラクターには人間らしさが生まれます。人間らしさが生まれると、そのキャラクターに対する共感度合いが上がり、『ずっとこの人物の活躍を観ていたないな』と思うようになります。
・いつもはコワモテな不良男子が捨てられた猫を優しく撫でてあげているのを見たら、今までの印象がガラリと変わって「実は良いヤツかも・・・・・・」と感じます。規律に厳しく怒ってばかりの委員長の女の子が、下校時にアイスを買い食いしているところを目撃されて、ペロッと舌を出して内緒ね、と言ってきたとしたら「アイツってあんなに可愛かったっけ・・・・・・とドキドキさせられます。
・外見と内面に差(ギャップ)があれば意外性を感じます。意外性は、読者に興味を持ってもらう大切な第一歩なのです。
・東京のスゴさとは「どんなにマイナーなカルチャーだろうと、必ず誰かがコミュニティをつくっている」ところだと思います。
・良い文章と悪い文章について。(中略)良い文章は説明を説明と思わせないということです。主人公の躍動感あるアクションシーンを読んでいたら、気づけばその作品に必要な知識が得られていた・・・・・・などが良い文章の証です。
・小説とアニメの相性は抜群です。理由はこの二つの映像補完の理想系だからだと思っています。
・『面白さが伝わった読者が多い』ときに本は売れる・・・・・・もっというならその『読者の判断機会に作品が恵まれたかどうか』で決めると思うのです。
・『演出』を強化するなら、たとえばヒロインの表情をわざと描かないという方法が考えられます。あえて俯いている描写にし、顔を隠すのです。その俯いて見えない顔から、手の甲に涙の雫をぽたり、と一滴落とします。その直後、さらにボタボタボタッと雫が連続して手の甲に落ちる・・・・・・といった後押しの演出効果も加えます。
・期待を裏切らず、不安を裏切れ
・小説で、やってはいけないこと(中略)僕は、主に次の三つを『やってはいけないこと』として肝に銘じています。
●過度にアンモラルな行為をする主人公など、読者の気分を徒(いたずら)に害するもの。
●読者に楽しませる気がない。読者を敵視しているもの。
●登場人物ではなく作家自身の主義主張が作品ににじみ出ているもの。
・原稿を読む解くときの目安として、加点法と減点法があります。(中略)作家の原稿を読むとき、僕は常に加点法です。いわゆる「いいね!」ポイントがあるかどうか。それをもっとも重視します。
・打ち合わせを経た改稿原稿------つまり「第二稿目」が届いたら、今度はチェック項目が三つに分かれます。
●一つ目は『一稿目で相談した「いいね!」ポイントが増えているか、より良くなっているかどうかの確認』。
●二つ目は『細かい整合性のチェック』。
●三つ目は『伝えなかった「よくないね・・・・・・」ポイントが自然に消えているかどうかの確認』。
・第三稿目以降では、三つめのチェック項目が修正されて、『消えなかった「よくなかったね・・・・・・」ポイントを真摯な気持ちで伝える』こととなります。
・締め切りと質の向上意外のストレスを与える編集者は、そもそもいないほうがいいでしょう。
・わかってくれるに違いない、という考えは作り手サイドの都合でしかありませんから、僕はなるべく、それに頼らないように心がけています。
・『勝負ポイント』は、一つの作品に五つくらいは欲しいところです。一つか二つしかない作品は、一五秒のプロモーションビデオをつくる素材がないということです。
・逆に『勝負ポイント』が二〇個も三〇個もある場合もよくありません。見せ場というのは、つまり回りのシーンよりも目立っている、光っているということです。
・打ち合わせで、なんらかの修正を指摘するとき、僕は絶対に『対案』を出します。
・良くないダメ出しは、『もうちょっとこのキャラ強く』とか『このシーンにももうちょっとサービスシーンを』とか『キャラが薄っぺらいのでどうにかして』という、『だけ』の指摘です。指摘自体は正しいとしても、それはなにを意図しているのか、その先を作家は知りたいのです。
・高橋さんの硬い文章だからこそ、いとうのいぢさんの柔らかなイラストを選んだのです。(中略)そのため、僕は『初めて読んだ原稿のイメージ』とはすこいズラして、イラストレーターを起用してます。
・同じ水圧なら蛇口の細いほうが水の勢いがあるように、文字数が少なければ少ないほど、読者がそのタイトルの印象を覚えていてくれる可能性が高くなります。
・一般的に、あらすじは『ストーリーを説明するための簡単な紹介文』と考えられています。しかし、僕はそうは思っていません。あらすじは『お見合い写真』のようなものですから、作品の『ストーリーを紹介する』のではなく『自己を最大限アピールする』ものであると考えています。(中略)
「この本はあなたと相性がいいですよ」と感じてもらうための『仕掛け』を盛り込んだ『自己アピール』が、あらすじだと思っています。(中略)
よりわかりやすく言えば、「僕もこんな物語の世界の中で活躍したいなぁ!」「私もこの物語の中で暮らしてみたい。楽しいかも」「ちょっと怖いけど、こんな世界を覗いてみたい」「このキャラクター好きになれそう! どんなストーリーでこのキャラが動き回るのかな?」などと思ってもらえれば勝ち、ということです。
・小説一冊は、だいたい二五〇~三〇〇ページくらいありますが、一ページのチェックに二~三分かかります。つまり、単純計算でも約八~一五時間の作業時間を要する計算です。
・一人称は実際に自分が体験したことのように書くことで、読者とのシンクロ率(感情移入度)を高められるという特徴がります。一方で、一人称では「自分(主人公)が知っていること」以上のものを書くことができません。たとえば作品の主人公がカメラを持っていると仮定します。そのカメラを通して見る映像が、「一人称」視点です。つまり、主人公がいない場所や時間帯ではそこにカメラがありませんから、見る(描写する)ことはできないのです。
・ファンの方々が期待していることをきちんと反映した賜物だと考えています。『空気を読む』ことは、メディアミックスを成功させる必須条件なのです。
・あら探しは、非生産的である上に、コンテンツは加点法でつくられることが理想的だと考えている僕としてはあまりしたくない行為の一つです。
・ドイツの国民性として、日本人と同じく好きなアニメを『購入して保管する』傾向が強いのだそうです
・業界用語で『サイレントマジョリティ』(静かなる多数派)とも呼ばれる層です。
・楽しいと感じられるものなら、多少の苦労は気にならないはずです。楽しいと思えるなら、もっとその時間を味わいたいと、試行錯誤してみるはずです。
・今や、エンターテインメントは、お金の奪い合いから時間の奪い合いに変化しました。
●書籍『面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集の仕事目録』より
三木 一馬 著
KADOKAWA (2015年12月初版)
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