このウェブサイトにおけるページは、書籍『ヒットの崩壊』(柴 那典 著、講談社 刊)を読んで良かったこと、共感したこと、気づいたこと、こんな視点もあるといった点などを取り上げ紹介しています。
・なぜ「音楽は売れない」のに「バンドもアイドルも生き残る」時代になったのか? (中略)音楽業界の構造が変わり、いまや音源より興業が重要な収益となっているから。つまり、CDよりもライブで稼ぐ時代になっているのだ。
・生の体験が重要になってきたという時代の変化を通して、音楽業界の産業構造も変わってきた。それによって実力あるアーティストはむしろタフに活動を続けることが可能になったのだ。
・ヒット曲は「聴かれる」ことではなく、10代や20代に「歌われる」ことによって生まれる。「カラオケで歌われるのがヒットの条件」と言われるようになった。
・2013年オリコン年間シングルランキングTOP5(中略)AKB48(中略)独占(中略)この結果は、一部のファンが同じCDを複数枚購入することによって実現したものだ。(中略)
10年代に入ってから「CDがたくさん売れること」と「曲が流行っていること」が必ずしもイコールではなくなった
・今消費されるCDは得点の方に需要が傾き、収録された音楽、歌のほうがオマケのようになってしまっています。
鬼龍院翔氏のブログより
・「『ヒットしている』という言葉と『売れている』という言葉は、日本では同じような意味で受け取られている傾向がある。ところが、アメリカでは、そもそも『ヒットしている』と『売れている』はイコールではないんです」
・信頼できる指標はどこにあったのか。筆者はカラオケのランキングに一つのヒントがあると考えている。実際に人々がその曲を歌った回数を並べたチャートだ。
・テレビというメディアは、見る人が自ら興味を持ってアクセスしないものを目に入るという特性を持っています。今の時代は一人ひとりが持っている知識や興味がどんどん深くなっていて、日本人が全員オタク化しているようなところがある。でもそのぶん隣にあるものが見えづらくなっている。だからこそ、そこに気付かせてあげるというのは、テレビというメディアの役割かもしれませんね
※フジテレビ制作局第二制作センター所属のディレクター、浜崎綾 氏談
・音楽業界の構造が変わり、「CDよりもライブで稼ぐ時代」というのは今や前提条件になっている
・ぴあ総研『2016ライブ・エンタテイメント白書』によると、2015年の音楽コンサートの市場は3405億円となり、4年連続で過去最高記録を更新し続けている。音楽フェスの市場規模は222億円、動員数は234万人と、こちらも拡大を続けている。
・「聴く」から「参加する」へ(中略)
ライブの体験はコピーできない。現場で生で味わう迫力や臨場感は複製できない。つまり、一回生によってその魅力が保たれている。
・実は優秀なスタッフは空調を操作して会場の設定温度や風の流れを変えたりしている。たとえば最初は涼しくても、後半の盛り上がるパートではあえて冷房をオフにして温度を上げたり、風の流れをコントロールしてステージにスモークの煙を溜めたりしている。制作側はそこまで考えてライブを作っているんです
・消費者の要望は、音楽を『所有』することから、音楽に『アクセス』することへと変化している
・ダウンロード配信すら徐々に過去のものになりつつある。(中略)「聴き放題」の定額制ストリーミング配信
・拡大するグローバル音楽産業
2015年の世界のレコード産業にとって歴史的なターニングポイントになった理由は、もう一つある。1998年以来、17年ぶりに音楽産業がプラス成長を果たしたのである。IFPIは、2015年の世界音楽市場全体の収益が150億ドルとなり、前年と比べて3.2%増となったことを発表した。(中略)
※補足 IFPIとは、International Federation of Phonogram and Videogram Producersの略で、国際的なレコード業界の業界団体のこと。
市場の数字が示すのは、前途したストリーミング配信の収益が世界のレコード産業全体の成長の起爆剤となっていることだ。
・音楽ということを考えると、『聴く』という言葉を最初に思い浮かべてしまって、そこだけを考えてしまいがちなんですけれど、一番強いのは『歌う』ということだと思うんです。童謡だってそうですよね。歌い継がれることで広まっていく。歌を歌う時って、必ずその人が主役になっていると思うんです。『聴く』というのは受容でしかない。
・『上を向いて歩こう』もそういう曲だと思います。(中略)『上を向いて歩く』ということが、いつの間にポジティブな行為として認識されている。もはや誰もそれを疑っていない。これって本当にすごいことだと思います。
●書籍『ヒットの崩壊』より
柴 那典 (しば とものり)著
講談社 (2016年11月初版)
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