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高橋 輝次 氏 書籍『増補版 誤植読本』(筑摩書房 刊)より

このウェブサイトにおけるページは、書籍『増補版 誤植読本』(高橋 輝次 著、筑摩書房 刊)を読んで良かったこと、共感したこと、気づいたこと、こんな視点もあるといった点などを取り上げ紹介しています。


・校正畏るべし(中略)

書いた本人が校正をすれば誤植が絶滅できるかいうと、そうでもないからやっかいだ。むしろ当人の校正の方がミスが多い。意味をとって読むからだろうと言われている。


・「読書」と「読者」、「著書」と「著者」もよくひっくりかえって誤植になる。内容だけでなく、似たような音のためによけい、とり違えが多くなるのであろう。


・自分の文章を人一倍大切にした芥川龍之介が、新しい作品集を出す時には必ず、校正の名人と異名のあった明治文学研究家の神代種亮(こうじろ たねすけ)を特に名指しで頼んで、校閲を任せた話も有名だ。


・誤植はいわゆるミスプリントで、ふつう、活版印刷過程で、組んだ時に誤りのある時に使う言葉である。


・歴史上有名な誤植では一六三一年に印刷された聖書で、モーゼの十戒の「汝、姦淫(かんいん)するなかれ」のnotが抜けたという話がある。この姦淫奨励聖書のそそっかしい印刷者は、罰金を払わされたが、今では値のつかない貴重本として大英博物館に保存されているという。


・ミスはミスなりに、いかにもそれらしく支離滅裂になってくれればいいものを、その誤植は実に見事にきまっていた。


・校正という仕事は厄介なもので、よく、縁の下の力持ちに譬(たと)えられる。誤植がなくて当り前で、たまに見落としがあると、小言を言われる。


・「校正の神様」として有名なのは神代種亮(こうじろ たねすけ)であるが、アルバイトがなくて貧乏している若い私に岩波書店の校正の仕事を世話してくれたのは、これも「校正の神様」といわれた西島九州男(くすお)氏であった。


・校正というのは独特な注意力の持続を要求する仕事で、生来それに向いていないひとは、いくら努力をしてもダメだと思ったほうがよさそうである。


・校閲者(中略)

原稿と、ゲラと呼ばれる刷り出されたものとを付き合わせ、間違いを探し、あれば訂正するのが役目だが、それだけではない。作者自身の間違い、つまり誤字脱字を探したり、内容に不手際がないか、日時に矛盾がないか等々を細かくチェックするのが校閲者なのだ。


・先輩作家や他の社の編集者が、口をそろえて新潮社の校閲部は優秀だと言っているが、それは本当である。実に細かいチェックをしてくれる。


・言葉は生きものである

言葉・文章というのは生きものである。言語は人間のつくりだした最大の傑作である。これほどに巧みに奥行きのある創造物を、その後人類は二度とつくっていない。


・原本と写本、原稿とゲラ刷り。いずにせよ両者を交差させつつ引きくらべ、誤りを正すというのが校正の本来の意味


・書物には誤植がある上に、原稿の誤書があり、文字の誤用がある。その上に内容の誤謬(ごびゅう)まで数えたら、大抵の書物には誤に充ち満ちていることになる。


・傑作は「白夜書房」が「日夜書房」になっていた例。小さな「ノ」ひとつのことだが、印象は百八十度変わる。ロマンチックで神秘的な名前が、終日汗だくで励んでいる感じになってしまう。


・読点は原則的に声にだして読んだ場合のことを考えてつける主義であり、一呼吸の区切りでないような個所に点は打たないことにしている。


●書籍『増補版 誤植読本』より
高橋 輝次 著
出版社: 筑摩書房 (2013年6月初版)
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