このウェブサイトにおけるページは、書籍『老人の取扱説明書』(平松 類 著、SBクリエイティブ 刊)を読んで良かったこと、共感したこと、気づいたこと、こんな視点もあるといった点などを取り上げ紹介しています。
・高齢者の困った行動の原因となる真実は、いったい何なのでしょうか? それは、ボケや性格によるものというよりも、老化による身体の変化だったのです。
・老人はなぜ赤信号でも平気で渡るのか? (中略)
●瞼(まぶた)が下がってくるし、腰も曲がっているから、信号機がある上の方がよく見えない
●転びやすいので足元ばかり見て歩いてる
●日本の信号は高齢者が歩くスピードで渡りきれないようにつくられている
など、体の変化が原因になっているのです。性格やボケなどとは一切関係がありません。
・姑が嫁の話だけ聞かないのは、嫁の声に秘密が隠されていた(中略)
年をとって難聴になると、「ほとんど聞こえない」のではなくて「一部聞こえにくくなる」のです。高い音、特に若い女性の声が聞きにくくなります。だから、娘や嫁の会話だけ無視されることが多いのです。
・やっぱり言ったことは聞いてもらいたい。そこで看護婦さんのように伝わりやすくするにはどうすればいいのか? コツは三つです。「低い声で、ゆっくり、正面から」です。
・老化の正体【その1】
→全部の音声が聞こえにくくなるわけではない。
→高い音声、特に女性の声が聞こえにくい。
・なぜ大声になってしまうかというと、耳が悪いからです。話している方も聞いてるほうも耳が聞こえにくいので、大きな声を出しているということに気づいていません。普通の会話だと思っているのです。
・高齢者は大声になってしまうだけではなく、音を不快に感じやすくなります。子どもの声や犬の鳴き声は、あなたが感じるよりもはるかに不快に捉えてしまうのです。だからこそ保育園が新しく建つのに反対したり、小さなこの声がうるさいと言ったりする高齢者がいるのです。
・難聴であると、認知症になりやすいこともわかっています。難聴の人は、そうでない人より6.8歳年齢を重ねたようだとも考えられています。
・補聴器には自立支援法の補聴器というものがあります。耳鼻科の先生に診てもらって一定の基準を満たし(障害6級以上)、書類をそろえれば1割の値段で購入することができるというものです。
・老化の正体【その2】
→子どもの声など高音域は、一定音量以上だと非常に不快に感じる。
→耳が悪いので、大声になってしまう。
・老人のよくある困った行動【その3】
同じ話を何度もする。
過去を美化して話すことも多い。(中略)
Cさんの父は、今のことは不満だらけで話すのに、昔のことはさもハッピーエンドのドラマのように素晴らしいと話します。「昔はよかった」というのが決まり文句です。(中略)
忘れやすいのは、最近の記憶からとなります。一方で長期的な記憶は、短期的な記憶に比べれば落ちるのは時間がかかります。その中でも20歳前後の記憶が残りやすいとされています。だから、昨日の夕食の献立は忘れても、子どもの頃通ってる学校のことは覚えています。
・老人のよくある困った行動【その3】
同じ話を何度もする。(中略)
昔話をする時、たいていは「自分はよく頑張った」「あの頃は良い時代だった」と、必要以上に美化されています。(中略)過去の記憶は、嫌なことは消えて、いいことが残りやすいのです。
・老人のよくある困った行動【その3】
同じ話を何度もする。(中略)
最近起こったことは、これも不思議なことに嫌なことのほうが思い出されやすくなっています。結果として、「今は悪い」「昔は良い」と記憶は書き換えられるので、高齢者が過去を美化して今を否定する話をしたがる結果となってしまっています。
・ 「何度も同じ話をしないでよ!」と否定すると、高齢者は「否定された」という記憶しか残りません。つまり「自分が何度も同じをしたから、あなたが怒った」ではなく、「理由はよくわからないけど、あなたが怒った」とインプットされてしまうのです。感情は心に強く刻まれやすいからです。(中略)
怒っても解決しないどころか、自体は悪化するということを覚えておきたいものです。
・「育て方を間違えた」---ネガティブな発言をする高齢者がいます。ネガティブな発言は、年を重ねたことが原因なのです。(中略)
ネガティブ発言を封じるのは逆効果
高齢になると、人の役に立っている実感が得られなくなる、ということがわかっています。見る・聞く能力が落ちる上に体を動かす能力も十分でないため、周りのサポートを必要とするからです。
・配偶者との死別により、鬱状態になる人が多いことも覚えておいてください。
・老人のよくある困った行動【その5】
せっかくつくってあげた料理に醤油やソースをドボドボとかける。(中略)
どうして年齢を重ねると、味を感じにくくなってしまうのでしょうか? 一つ目の理由は、味蕾の生え変わりが遅くなること。古くなった味蕾はセンサーが弱いため、味も感じにくくなります。二つ目には、高齢になると薬を多く飲みがちになりますが、これが味覚を落とす原因になるのです。
・入れ歯は、素材によって味の感じ方が変わります。レジンという素材ですと自然な色を出せるのですが、口の感覚も味の感じ方も落ちてしまいます。味覚が感じにくくて困る場合は、もっと味が感じやすくなる金属製の入れ歯に変えるのも一つの方法です。
・年を取ると、「あれ」「これ」「それ」が増えるのは記憶力の問題だけではなく、記憶をたくさんしているからということもあります。高齢者は脳が悪いとは限らないのです。(中略)長年生きてきたため記憶している量は多いことから判断材料が多く、判断力は高いことがわかっています。
・高齢者が、「あれって言ったらあれのこと。しつこく聞かないで!」 と怒ってしまうことがあります。この場合は、問題です。認知症の前兆かもしれないからです。なお、怒ってしまうのは、自分で「あれ」が何だかわからなくなっており、そのことを指摘されるのが嫌だからです。
・「間違いは指摘する」というのは一見正しいようですが、相手を追い詰めてしまうのでやめましょう。
・本を読むと認知症の発症率を35%減らすことがわかっています。
・特に人間関係での複雑なことに取り組んでいると、認知症の発症率を20%減らすことができます。人間関係は大変なのはすごくわかりますが「認知症予防にもなる」と前向きになって取り組んでみてください。
・認知症予防にもつながります。散歩をしながら話をするというのも有効です。同時に二つ以上のことをすると、認知機能を鍛えることができるからです。会話しながら一緒に歩くのはよいことです。
・そもそも高齢者は、信号機が見えない
信号を渡る時、高齢者がどこを見ているかわかりますか? 高齢者は信号をあまり見ていません。転ばないようにと足元を見ているのです。その上、腰も曲がっています。だから信号を見上げるのは一苦労です。一休みして体を持ち上げないと見えません。
さらには、瞼(まぶた)まで下がっています。見える範囲(視野)の上のほうが見えにくくなるので、信号も見えなくなります。
・瞼(まぶた)が下がる眼瞼下垂(がんけんかすい)という病気は、眼科で取り扱うものです。信号を見逃した経験がある患者さんもやはりいて、危ないなと感じています。多くの眼瞼下垂の患者さんの手術をしてきましたが、皆さん「目が開いて見やすくなった」と口をそろえます。
・老化の正体【その8】(中略)
→転倒防止のために足元ばかり見るから、信号機はほとんど見ない。
・舌のクリーニングを定期的にするのも有効な方法とされています。ただし、やりすぎで逆に舌が悪くなってしまう人もいて、なかなか難しく賛否両論あるようです。
・口呼吸が多いほど口は臭くなる(中略)口から息を吸うことが多いと、口臭がきつくなってしまいます。
・すごいいびき(中略)
でもある日、いびきの治療というのがあることがわかりました。空気を送り込むという治療法なのですが、早速父に見せました。すると、いびきはなくなりました。一番喜んだのは母です。父もいびきがなくなり、口臭がしなくなりました。しかも夜によく寝られるようになったので、昼ご飯の後に眠くなっていたのが減ったのです。(中略)
横向きで寝るとよいです。
・ 高齢者の事故の中で最も多いのは、外ではなく家の中です。独立行政法人国民生活センターの報告によると高齢者の事故のうち、77.1%が家庭内で起こっています。さらに、65歳以上は2倍大きな事故になります。なぜなら、筋肉・骨が弱くなるからです。
家庭内で起きる事故で多いトップ2は、転落(30.4%)転倒(22.1%)。つまり半分以上は、転ぶという事故なのです。特に階段で転んでしまうと危険で、最も骨折が多いのは階段での転倒です。
・遠近両用眼鏡が転倒を招く
高齢者の転倒で目に関係することとしては、「遠近感」「メガネ」「光」が主な要素となります。
・遠近両用眼鏡が転倒を招く(中略)
これから足を伸ばすもう一つ下の階段は、遠近両用で近くにピントが合っているとぼやけますので、転びやすくなるのです。そこで顎を引いて下を見るという癖をつけましょう。
・高齢者のことは、高齢者自身よりも詐欺師のほうが勉強していて詳しいです。高齢者がどうやったほうが話を聞いてくれるのか、視覚がどう見えにくいのかも熟知しています。詐欺師にとって都合がいいことは聞こえやすい声や見やすい文字を使い、都合が悪いことは聞こえにくい声や読みにくい字を使うのです。
・老人のよくある困った行動【その13】
「悪い病気じゃないのか・・・・・・?」と思うくらい食べない。(中略)
人間は無意識に、小分けされているものでもそれを見ると、十分に量があると判断してしまうからです。つまり「満腹だ」というのは、胃や血液だけではなく、目からの情報でも決まってしまうのです。
・高齢者に「痩せたね」は、恐怖を植え付ける言葉(中略)
高齢者にして見ると「痩せた」というのは「ガンかも」「命の危険があるのでは」と真剣に悩ませてしまいます。
・歯周病予防で誰でもすぐにできる対策としては、歯ブラシは最低でも月に一本変えることです。
・喉を詰まらせたら、とにかく背中を叩く!(中略)
一つは、とにかく背中を叩く「タッピング」という方法です。背中を叩いて、詰まったものを出すのです。
もう一つは「ハイムリック法」といって抱えながら胸を押して詰まったものを出す方法です。ハイムリック法のほうが効果が高いのですが、うまくできないと内臓の損傷リスクがあります。自信がない場合は、タッピングで構いません。
一番良くないのは、何をしたらいいのかわからないからと、前と立ち尽くしてしまって何もしないことです 。
・認知症の薬の副作用でも眠くなったり眠りにくくなったりします。
●書籍『老人の取扱説明書』より
平松 類 (著)
SBクリエイティブ (2017/9/6)
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