このウェブサイトにおけるページは、書籍『拝啓、本が売れません』(額賀 澪 著、ベストセラーズ 刊)を読んで良かったこと、共感したこと、気づいたこと、こんな視点もあるといった点などを取り上げ紹介しています。
・この一冊の中に、本の売れない出版業界の起死回生の一手が潜んでいたら更に嬉しい。
・某社の編集者曰く、「飲み会の幹事をやらせたら小学館が最強!」らしいけれど。
・S藤氏というベテラン編集者が担当についてくれた。受賞作品であるはずの『屋上のウインドノーツ』のゲラに大量の緑色の付箋(=修正指示)が草原のように貼られているのを見たときは、吐きそうになった。
・眞家早馬の弟・春馬がとあるお菓子を食べながら歩くシーンがあったのだが、それに対して校閲者から「このお菓子は〇年前に製造中止になっています。作中では二〇一五年のはずなので、このお菓子が存在するのはおかしい」という指摘が入った。もう、菓子折りを持ってお礼に行きたいくらいである 。
・担当編集六千万部突破の編集者(中略)
その人の名前は、三木一馬。現在は株式会社ストレートエッジの代表取締役の務めているが、かつてはアスキー・メディアワークスの電撃文庫編集部で活躍していたライトノベル編集者だ。
・「でも、送り届けるべきところに送り届けなければ、何万部刷ろうが意味がない。当然じゃないですか? 『肉が食いたい!』って思ってる人に『どうぞー美味しい野菜炒めでーす』って野菜炒め持って行っても、『いや、美味しいかもしれないけど俺が食いたいのは肉だから!』ってなるでしょ? 今は誰かの作品にを送り届けるための手段がたくさんある。あり過ぎて困るくらいある。ということは、受け取る側が自分の興味がない作品に触れる機会も多いんですよね。多分、受け取る方も『自分が楽しめるのはどれなのか』って判断するのが難しくなってると思いますよ。ライトノベルっていうのはこれは、『これはあなた達が楽しめるものですよ!』と理解してもらうための、電車の行先表示みたいなものです」
*三木一馬 氏談
・「これは漫画の話ですけど、キャラクターはシルエットにしても誰だか分かるように描かないと駄目だ、って言うでしょう?」
人気漫画の登場人物は、シルエットにしても誰だかわかる。悟空もコナンもルフィもそう。黒で塗りつぶされてしまっても、その輪郭だけ判別できる。
「小説もそれと一緒なんですよ。たとえキャラクターの名前を忘れてしまっても、『あの○○してた奴』『いきなり××って叫んだ奴』って読んだ人が覚えていられるくらいじゃないと。」
*三木一馬 氏談
・本を売る一番の近道(中略)
「小説の市場は、はっきり言って小さいです。めちゃめちゃくちゃ小さいです。それが漫画になると市場の大きさが十倍になる。アニメになったらその認知度がさらに跳ね上がる。僕も自分が担当した作品がアニメになってよーくわかったんです」
*三木一馬 氏談
・「パッケージは全然売れなかったけれど、原作は売れた、ということは多くあります。でも逆ってないんですよ。アニメがヒットしてパッケージが売れれば、絶対に原作も売れるんです」
「アニメを成功させることが、本を売る一番手っ取り早い方法というわけですか」
「そういうことです」
*三木一馬 氏談
・「売れる作品に一番必要なことは何ですか?」(中略)
「作者がドヤ顔しているかどうかですね」(中略)
「作者がドヤ顔しているような作品じゃないと、生き残れないんです。特にラノベはシリーズ展開が前提ですから、そのシリーズを書き続けるためには、作者がドヤ顔できるくらいのパワーがないと」
・店頭からベストセラーを生み出す書店員(中略)
「本を売るにはどうすればいいか」を探るためだ。何故、東京から遠く離れた盛岡なのか? その答えは、盛岡駅に直結する駅ビル「フェザン」の中にある。(中略)
さわや書店(中略)
ORIORI店の店長・松本大介さん(二〇一八年三月現在は、フェザン店の店長)
・前回は編集者という作り手側の目線から「本を売る方法」を探ったが、今日はその本を実際に読者へと送り出す書店員の店に注目したい。
・書店は面積に限りがある店における本の数にも限りがある 。
「本屋の棚は常に戦場だからね」
けらけら笑いながら松本さんはそう言った
・書店って昔は情報収集の場だったんですよね。本は情報を得るための重要な手段だった
*松本大介 氏談
・今進めている企画は『なるべく巻き込む人を多くする作戦』というのを実行しているんです
*松本大介 氏談
・プルーフというのは、本が完成する前に作られる見本誌のことです。
・かつて珍しく画期的な販促手段だったプルーフは、《当たり前の存在》になった。
・「だってさー、プルーフを配ったって、読む側は《いいコメント》しか書かないし、配る側も《いいコメント》しか求めてないでしょ。《なんでも褒めるだけ》の風潮が蔓延してるんだよ」
*松本大介 氏談
・「よくよく考えてみてよ。プルーフって、本が完成する前の状態なわけでしょ? それをみんなで褒め称えたって完成に向けて全くブラッシュアップされないじゃない。ただ褒められて気持ちよくなって、帯に絶賛コメントが入るだけ。ちょっとでも面白くしてやろうって気持ちがなければ、又吉さんの『火花』が書店に連れてきてくれた人達はあっという間に逃げて行っちゃうよ」
*松本大介 氏談
・「作り手が面白い本を妥協することなく作ること。それを送り出す書店員は目利きであれ。それが僕が思う本が売れるために必要なこと、かなあ」
*松本大介 氏談
・《ここが面白くないぞPOP》
・この複雑な気持ちを言い表すなら、やはり『タンスの角に足の指ぶつけちまえ』ですね。もしくは『牛乳飲んでお腹痛くすればいいのに』です
・松本さんに強烈にオススメされた映画『インターステラー』を借りに行った。改めて思ったが、書店員さんは面白いと思ったものを人に勧めるのがべらぼうに上手い。
・株式会社ライトアップ(中略) Web コンサルタントとして働いてる大廣直也さん
・基本的に優先されるのは「先月出た本より今月出た本」だ。一年前に出た本を宣伝する予算などない。
・「SNSではなく、きちんとWebサイトとして作った方がいいです。SNSに投稿した文章って、検索エンジンになかなか引っかからないんですよ。SNSはかけ算には有効なんです。例えばすでに有名な人が、商品をPRするときとかですね。でも、あくまでSNSはコミュニケーションツールですから。見せたい情報も時間の経過と共に流れていってしまう。情報しっかり貯めていけるWebサイトは持っておいた方がいいです」
*株式会社ライトアップ Web コンサルタント 大廣直也さん談
・良質なコンテンツとは、要するに面白い文章をオリジナルで作れるかどうかなんですから。検索エンジンに評価してもらえるコンテンツを作り、Webサイトに来る人を増やすというのは、サイトを育てるということです。サイトを育てるとは、ファンを育てるのと同じです
*株式会社ライトアップ Web コンサルタント 大廣直也さん談
・映像プロデューサー(中略)
「三十万部!」
三本指を私の前に掲げ、彼女は私に笑いかけた。
「それが映像化のボーダーライン」
浅野由香(カルチャア・エンタテインメント株式会社・映像プロデューサー)
・佐藤青南さんという小説家がいます。(中略)青南さんが定期的に横浜で「本にかかわる人の交流会」なる会を開いている。作家、編集者、書店員……etc、本に関わる職業の人が定期的に集まって情報交換をして交流するのが目的の会だ。
・映像化のボーダーライン(中略)
「まずは、エンタメ性が高いもの。あとは、マニアックなものより、より多くの人が---みんなが楽しめるものであること、かなあ?」
*浅野由香(カルチャア・エンタテインメント株式会社・映像プロデューサー)さん談
・「……つまり、三十万部売れていれば企画も取りやすく、お金も集めやすい、と?」
「もちろん三十万部売れていないと絶対に映像化できないってわけじゃないんだけどね」
*浅野由香(カルチャア・エンタテインメント株式会社・映像プロデューサー)さん談
・多くの人を説得するには絶対《データ》とか《数字》というやつが必要で、その中でも「売り上げ」は強い。めちゃくちゃ強い。
「映画を作る場合は、原作・キャスト・監督の三つが重要なの。原作が有名じゃなかったとしても、キャストと監督をビッグネームにお願いできれば企画は通るかもしれない。逆もしかり、だね」
*浅野由香(カルチャア・エンタテインメント株式会社・映像プロデューサー)さん談
・「実はCCCの出版事業部で、面白いのに売れなかった本の表紙とか帯を別のものに変えてもう一度売るという取り組みをやっているんだけど、表紙が新しくなるだけで売れる本はたくさんあるの。いい本書いて、いい表紙をつける! これが私からのアドバイス!」
*浅野由香(カルチャア・エンタテインメント株式会社・映像プロデューサー)さん談
・優れたブックカバーデザインには、三つの大事なポイントがある。
①作品の本質を表していること
②デザインコンセプトか一貫していること
③売れること
・「担当した本が発売になって、三日後くらいに売り上げのデータを確認すると、その本が一ヶ月後にどれくらい売れているか経験則でなんとなく予想できるんですよ。もちろん、突然テレビに取り上げられたとか、幸運な出来事が発生すれば別ですけど、そういうことがなければ基本的に予想通りの数字が叩き出されておしまいですね」
*川谷康久 氏談 (ブックデザイナー)
・なんだかんだで、本は初週の売れ行きが重要なのだ。本当に、本当に。
・予定調和から、外れろ(中略)
やっぱり、見る人の予想を少し裏切ることかな」爪痕をつけるというか、仕掛けを施すというか……
*川谷康久 氏談 (ブックデザイナー)
・「新潮社から新しく作る《新潮文庫nex》のフォーマットデザインを作ってくれって依頼があったときは、『どうして僕に依頼するんだろうなあ?』って疑問に思いました」
「私も当時はデビュー前でしたけど、新潮社には立派な装幀室があるのに、外部のデザイナーに依頼するなんて意外だな、と正直思ったんです」
*川谷康久 氏談 (ブックデザイナー)
・新潮社装幀室といったら、これだけで一つのブランドのようなものである。その歴史は五十年以上。新潮社の刊行する本のデザインをほぼすべて担当している。とにかく凄いところなのだ!
・『帯の掛かる部分に文字を置かない』とか『文庫だから文字サイズはこうじゃないと』とか、そういう制約を一つ一つぶち破らせていただきました
*川谷康久 氏談 (ブックデザイナー)
・ 作り手も読者もそういうものに嫌気がさしているんじゃないかな。何かが当たって、それに追随したり真似したもので世の中があふれ返っていくことに、絶対に飽きてますよ
*川谷康久 氏談 (ブックデザイナー)
・私は《売れる本》が書きたいんじゃない。自分が「面白い!」と思った本を、売りたいんだ。
・『拝啓、本が売れません』はどういうカバーを作るべきかというアドバイスをいただいた。
三木さんはこの本の原稿を読んで、
「この本の読者が小説家志望の方、出版業界に関心を持っている学生ならびに二十~三十代前半の方が中心になると思います。これだけだと市場が少な過ぎるので、カバーは逆に広くマス=(大衆)に向けないといけないかな」
というアドバイスをくださった。
・《ものが売れる》っていうのは《いいものを誰かに薦めること》で起こる
・自分が面白いと思ったものを、丁寧に伝えていく努力をするしかない
・その本が置かれた場所は、誰か死に物狂いで勝ち取った場所です。誰かが必死に守ろうとした場所でもあります。誰かの渾身の一冊を押しのけて、その本はその場所を勝ち取ったんです。
●書籍『拝啓、本が売れません』より
額賀 澪 (ぬかが みお) (著)
出版社: ベストセラーズ (2018年3月初版)
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