このウェブサイトにおけるページは、書籍『プロカウンセラーの聞く技術』(東山 紘久 著、創元社 刊)を読んで良かったこと、共感したこと、気づいたこと、こんな視点もあるといった点などを取り上げ紹介しています。
・「沈黙は金、雄弁は銀」「言多きは品少なし」「一度語る前に二度聞け」など、しゃべることよりも、聞くことの大切さが世間一般では強調されています。
・仏像を見ると、耳が大きく口の小さい像が圧倒的に多いのがわかります。つまり、神仏はわれわれの願いを聞いてくれる存在なのです。
・目次
1 聞き上手は話さない
2 真剣に聞けるのは、一時間以内
3 相づちを打つ
4 相づみの種類は豊かに
5 相づちはタイミング
6 避雷針になる
7 昔の主婦は聞き上手
8 自分のことは話さない
9 他人のことはできない
10 聞かれたことしか話さない
11 質問には二種類ある
12 情報以外の助言は無効
13 相手の話に興味をもつ
14 教えるより教えてもらう態度で
15 素直に聞くのが極意
16 聞き上手には上下関係なし
17 寡黙と「いま・ここ」の感覚
18 嘘はつかない、飾らない(オープンということ)
19 相手の話は相手のこと(わかるが勝ち)
20 評論家にならない
21 共感とは芝居上手
22 LISTENせよ、ASKするな
23 話し手の波に乗る
24 言い訳しない
25 説明しない
26 話には小道具がいる
27 お茶室は最高の場
28 したくない話ほど前置きが長い
29 聞きだそうとしない
30 秘密の話には羽がある
31 沈黙と間の効用
・聞き上手になるということは、相手の気持ちを負担に感じず、こちらから話したくならないような訓練が必要なのです。
・自分の話に耳を傾けてくれる人の言うことを、人はよく聞くものです。自分の意見をまったく聞いてくれないような人の話なんて、誰も聞きたいとは思わないでしょう。
・第一の修行は、相手の話を「素直に」を聞くことです。相手に反論したいときも、話をよく聞いてあげると、相手の意見も自然とおだやかになり、反論しなくてもすむことのほうが多いのです。これが聞き上手のだいご味なのです。
・母親から、祖母や父親のぐちを聞かされつづけた子どもには、心理的な症状が出ることが知られていますが、このように心理的症状を出す人の多くは、家族の葛藤の調整役をしています。調整役とは家族の話の聞き手です。
・耳も頭も聞くモードになっていないと、相づちはなかなか打てません。(中略)
人間は、笑いながら怒鳴ることができません。言葉と態度は逆のメッセージを発することができますが、態度と態度で同時に反対のメッセージを発することはできないのです。だから、人は態度から判断するのです。
・少なくとも、相手はそう思っている、と考え直し、「本当に、そうかも知れませんね」と言いました。以後、その相談者との面接はスムーズになりました。
・相づちの種類は豊かに(中略)
「そう」「そうそう」「そうよ」「そうよ。そう」、「そう」は相手があなたに肯定してほしいと思ってるときに便利な相づちです。
・相づちの高等技術、くり返しです。相手の話したことをくり返すことは、素晴らしい相づちになります。(中略)
くり返しの相づみは、「明快に」「短く」「要点をつかんで」「相手の使った言葉で」というのが大切なポイントです。
・プロの聞き手が使わないのに、ふつうの人によく使われる相づちがあります。それは「わかる」「わかるわ」「よくわかる」という相づちです。なぜかと言いますと、相手の言うことがわかるというのは本当は至難の技なのです。
・相づちとは読んで字のごとくで、鋼を鍛えるときの相方の打ち出す槌です。タイミングが狂うと鋼でなく相手に槌を打ちつけるはめになりかねません。
・ふつうの人が心の深奥をかいま見ると、秘密を保持するだけでもたいへんです。へたをすると相手を傷つけ、信頼感を失うこともあるので、人の秘密やゴシップを自分のストレス解消にするような人以外は、深い話は聞かないほうが無難でしょう。
・深い話をすることは、ある意味で自分の弱点を相手にさらすことになります。話を聞きだそう聞きだそうとあせると、相手は聞き手のそうした意図に疑心暗鬼を抱き、信頼できなくて話をしなくなります。(中略)
ではどうすればいいのでしょう。話は簡単なのです。相づちを話を深めるモードにします。話を深めるモードとは、会話の流れに逆らわないことです。話をよく聞いている、すべて受容していることが伝わる相づちを入れるのです。
・「上手に聞く」ことはコミュニケーションにとっての最大の武器です。それは人を助けもしますが、殺しもします。よく切れる包丁と同じです。
・秘密を守るのにいちばんいい方法は、なんだと思いますか? (中略)
ではどうすればよいかといいますと、聞いた話を忘れることなのです。
・ぐちを言うということは、当人に対してではなく、第三者に言っているのです。これは悪口を直接その人に関係させないための知恵なのです。(中略)
悪口を言うからこそ、われわれは悪くならないですんでいるのです。
・悪口は精神の浄化作用なのです。自分と関係させずに言ったり、聞いたりできると、自然の浄化作用が働きます。昔の主婦はこうしたことを体験的によく知っているいたのだと思います。まさに主婦の知恵だったのです。
・自分のことは話さない(中略)
自分の考えは自分にしか適用できないことが多いものです。ふつうの人は、自分の経験談を話すことが相手の経験値を増すと考えています。これはあながち否定できませんが、実際は話し手が考えているほどの効果はないのです。なぜなら、経験・学習というのは、実地経験しないとわからないことのほうが大きく、自分の体験は、そのときのタイミングや状況に合って、うまくいったことなのです。同じような機会はまずありません。
・自慢話を聞いてあげるとこは人間関係をよくしますが、自慢話をすることは人間関係を悪くします。
・アメリカでは音を立ててスープをすするようなことをしますと、それだけで友人を失ってしまいます。これはなぜかというと、文化が人間関係のベースになる、快・不快の感情と関係しているからです。
・心のケアの最良のものは、悩みを批判したり、助言することではなく、ただひたすらに聞いてあげることなのです。
・「でも」を言ったら会話がぎくしゃくするのです。
・人間は、自分の聞いてほしい話を、相手に質問する形で述べるのです。
・聞き手はいつも相手の会話の鏡となるような応答することが、聞き役を持続するコツなのです。
・その人の人間性を高めないと答えが出ないような質問に対しては、「むずかしいですね」としか答えません。(中略)
「むずかしい」の正答としては、納得しない人も多いでしょう。それらの人びとは、むずかしさを避けたいのです。考えるしんどさを誰かに肩代わりしてもらいたいのです。本当は誰も肩代わりできないのですが。
・情報以外の助言は無効(中略)
あまり効果がない助言は、正しいけれどもわかりきった陳腐な標語のようなものです。
・聞き手は話し手より偉くはないことを自覚しているべきです。それでもついつい人の悩みを聞くと、自分がその人より偉いと感じ、助言をしてしまうことが多いものです。
・教えるより教えてもらう態度で(中略)
人間には学びたい本能もありますが、教えたいという気持ちが強いことも事実です。
・聞き上手は寡黙であると述べました。カウンセラーは、カウンセリングの場面では寡黙ですが、日常生活では寡黙だとはかぎりません。私は、日常生活ではよくしゃべり、むくち(六口)だと言われるほどですが、不思議なことに、カウンセリングの場面になると、むくち(無口)です。
・カウンセラーがよく会うのは、家族のなかで問題を起こしている人です。家族で何か問題を起こす人というのは、家族の調和をはかる役割を負わされている人が多いとわかっています。
・相手の話は相手のこと(わかるが勝ち)(中略)
自分の立場を主張するのではなく、相手の気持ちになって、しかも相手と自分を混同しないこと、これがこの項のテーマなのです。
・「シカト」が陰湿ないじめの極みなのも、人間にとって無視されるのがいちばんつらいからです。
・聞き上手は、相手の言う内容がどのようなものであろうと、そこには一理あることを認識しています。
・相手の話をよく聞こう、理解しようとする人は、正しいことにのみ目を向けるのではなく、人間の弱い部分、影の部分に対しても理解があるのです。
・人の話を聞くことは、聞き手にとって、話し手と弱点をどこかで共有することを意味しています。これが聞くことのたいへんさの一つでしょう。
・LISTEN せよ、ASKするな(中略)
たずねるのと聞くとのいちばん大きな差は、「たずねる」のが質問する人の意図にそっているのに対して、「聞く」のは話し手の意図にそっていることです。
・聞く態度の基本は、聞き手と話し手が対等な人間関係をもっていることです。報道関係者のようなプロでも、子どもをインタビューするのはなかなかむずかしそうです。
・子どもとの会話は、お互いの呼称が決まってから始まります。こちらから変な質問、必要のない質問をしないで、ニコニコ笑って見ていますと、たいていの子は自分の語りたいことを自由に話しはじめます。
・話し手は聞き手との対等感が感じられたときから、話はじめます。話はどんどん広がり、深まります。そして、話し手が聞き手との対等感がもてなくなると話が止まります。
・流れに逆らわない第一は反論しないことです。逆の意見を言わないことです。これを簡単に行なうには、「でも」「しかし」「けれど」というような、逆説の接続詞を言わないことです。
・プロのカウンセラーは、相手の話の内容にも関心はあるのですが、それよりも、どうして来談者がその話をするのかということのほうに関心があるのです。
・心理学は行動の学問です。どうして人間はそのような行動を一般的にとるのか、ということが心理学のメーンテーマなのです。
・自分のコンプレックスは気づきにくいのですが、他人のそれに人は敏感なのです。
・感情と思考は拮抗する心理機能です。感情は基本的には快・不快にもとづく判断機能です。一方、思考は、論理の整合性にもとづく判断機能です。感情型の人と思考型の人の論争は、話し合いが決裂して結論が出ないことが多いのはこのためです。
・前置きが長いのは、話しにくい話
・子どもか親の言うことをきくのは、愛する人を悲しませたくない、愛する人から拒否されたくない、との思いがベースになっています。愛ではなく、罰で言うことを聞かせようとすれば、権力に頼ることになります。
・「話に具体性がない話」は、具体的な話の内容より、気持ちを聞いてほしいときで、これは理屈に合わない話をする時と同じ(中略)
現実に向かう気力が落ちているといってもよいでしょう。
・プロのカウンセラーの会話が一般の人の会話と違う点は、沈黙と間を多用することです。(中略)
双方の会話はとくに沈黙が重要になります。これは来談者が自分の考えを深め、自分がわかり、自己に沈潜するために必要な時間といってよいと思います。
・聞くことは相手の表現を受け取ることなので、自己表現に比べて自分の方法で聞き方を組み立てることができにくい
●書籍『プロカウンセラーの聞く技術』より
東山 紘久 (ひがしやま ひろひさ) (著)
出版社: 創元社 (2000年9月初版)
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