FaxDMトップ > 会社案内 > 成功者の知恵 > 生島 あゆみ 氏 書籍『一流と日本庭園』(CCCメディアハウス 刊)より

生島 あゆみ 氏 書籍『一流と日本庭園』(CCCメディアハウス 刊)より

このウェブサイトにおけるページは、書籍『一流と日本庭園』(生島 あゆみ 著、CCCメディアハウス (2019/3/27) 刊)を読んで良かったこと、共感したこと、気づいたこと、こんな視点もあるといった点などを取り上げ紹介しています。


・なぜ、一流とされる人達は成功を手に入れた先に、日本庭園にたどり着くのか


・禅と瞑想

一休禅師(中略)と虎丘庭園(京都)
宮本武蔵(中略)と本松寺庭園(明石)
スティーブ・ジョブズ(中略)と西芳寺(京都)
夢窓疎石と瑞泉寺(鎌倉)


権力の象徴

空海(中略)と神泉苑(京都)
足利義満(中略)と金閣寺(京都)
豊臣秀吉(中略)と醍醐寺三宝院(京都)
岩崎弥太郎(中略)と清澄庭園(東京)(中略)


もてなしの形

千利休(中略)と大徳寺黄梅院(京都)
水戸光圀(中略)と小石川後楽園(東京)
ブルーノ・タウト(中略)と桂離宮(京都)
稲盛和夫(中略)と和輪庵(京都)(中略)


美意識の追求

川端康成(中略)と祇王寺(京都)
エリザベス女王二世(中略)と龍安寺(京都)
デビット・ボウイ(中略)と正伝寺(京都)
安藤忠雄(中略)と本福寺(淡路島)


・日本庭園は、大きく分けて三種類の庭があり、いずれも自然の風景を手本としています。

【池泉(ちせん)庭園】
自然の風景を愛で、その美しい景観を縮小したものを表現した庭です。(中略)

【枯山水(かれさんすい)庭園】
水を使わず、白砂などで水を表現したもので、日本特有のもの。白砂は、もともと南側に敷き詰められ、太陽や月の光を反射させて建物内を明るくする、間接照明の役目がありました。また、清めの意味もあり、住職の交代時の特別な儀式などに白砂を敷きつめた場所が使われていました。(中略)

【露地(ろじ)】
茶室に入る前に、口や手を清めて、心静かに茶室に入るための庭です。千利休以後、茶室の庭として発展していきました。


・日本庭園の鑑賞法も三種類です。

【舟遊式(しゅうゆうしき)】
舟から庭を鑑賞します。舟に浮かぶ感覚と、景色を低位置から観られる楽しみがあります。(中略)

【回遊式】
池や築山の周りを歩いて回る鑑賞法です。(中略)

【座観式(ざかんしき)】
屋外から庭を眺めます。普通、縁側に座り、庭の近くから観るのがいいと思われがちですが、私は庭と少し距離をとった屋内の奥から、座って庭を観るようにしています。開いた障子の枠を使い、庭を切り取るように観ると奥行きが出ます。これを、額縁効果と言います。


・宮本武蔵は剣術家としては有名ですが、作庭していたことはあまり知られていません。宮本武蔵が造った庭を実際、目にしたとき、彼の人となりがわかったような気がしました。


・スティーブ・ジョブズ(中略)

禅とのふれあいから、京都が好きになり、庭園を巡っていたことはあまり知られていません。彼が絶賛した西芳寺。今は、「苔寺」として有名ですが、創建初期は全く違う風景だったようです。


・現代はストレスフルな時代で、たとえばアメリカのグーグル社が「マインドフルネス」という、宗教観を取り去ってただ頭の中を静めてクリアにする瞑想法を、社員に就業中時間をとって実践するように促しています。特別に作られた静かな環境の部屋には、瞑想用のクッションも置かれているそうです。


・宮本武蔵(中略)と本松寺庭園(明石)(中略)

最も特徴的なのは、大滝・小滝です。枯滝の流れを水分石によって二つに分けることはありますが、大滝・小滝としっかり区別している庭は少ないように思います。推測の域を超えませんが、これは武蔵の二刀流の剣を表しているのではないでしょうか。


・京都を愛したスティーブ・ジョブズが、足繁く通ったのは、苔寺としても有名な西芳寺。


・スティーブ・ジョブズ(中略)

新製品のプレゼンテーション時には、イッセイ・ミヤケのタートルネックに、リーバイスのジーンズ、ニューバランスのスニーカーを着用していました。多くの人にとって鮮明な印象を残したプレゼンテーションの姿ですが、これは、毎朝何を着ていくかを悩む時間を節約するための彼独自のファッション・スタイルでした。ノームコア(究極の普通)と呼ばれましたが、この考えも禅から来たのかもしれません。


・スティーブは西芳寺庭園のどこがどのように気に入っていたのでしょうか。ここからは私の想像の域を超えませんが、三つほど考えられます。

まずは、やはり、清楚で美しい苔の景色を好んでいたのではないでしょうか。シンプルなデザインを好むスティーブには、自己主張が少なく、自然がただただ美しいこの庭の美意識に魅了されたのではないかと思います。二番目は、禅に傾倒していたので、夢窓疎石の残した石組の力強さに感銘したのではないでしょうか。そして三つ目は、西芳寺庭園全体から醸し出される無(悟り)の境地、平穏で心を落ち着かせ瞑想状態になれる環境、その心地よさが好きだったのかもしれません。苔は空気を浄化する役目があります。


・スティーブの言葉に、「シンク・ディファレント(違う考え方をする)」があります。クリアティビティ(創造力)には、普通の物差しではなく、新しい目で物事を見据える能力が必要です。違う考え方をすることは、視点を変えることで、ものづくりには大切なことだと思います。


・夢窓疎石と瑞泉寺(中略)

夢窓疎石はきっと自分の理想郷を目指したのでしょう。あらゆる無駄を取り去った究極の「修繕の際」がそこにありました。ここに立った時、私は感動で足がすくみ、思わず涙が出ました。


・権力の象徴

空海(中略)
足利義満(中略)
豊臣秀吉(中略)
岩崎弥太郎(中略)

四人は死の恐怖を目前に、庭園として、自分の栄華や安らぎの場所を残しておきたかったのではないでしょうか。


・足利義満(中略)と金閣寺(中略)

日本国王と自称した足利義満による金閣寺の庭は、夕日までも計算に入れて築かれた。政治力に長け芸術にも造詣の深かった義満が、金色に輝く世界に込めた真の野望とは。


・金閣寺の美しい庭園は、建築、美術だけでなく、仏教、道教の意味合いを取り入れ、特に禅宗と浄土信仰が、大切な要素として表現されています。また、日本国王と自称した義満が、自分の権力を誇示するだけでなく、強力大名の忠誠心をも石で表しています。舟遊びに、座禅三昧と、義満はここに自分独自のユートピアを創りたかったのでしょう。


・金閣寺(中略)

ただみなさま、舎利殿の写真は撮りますが、庭園自体を注意してご覧になる方はまだ少なく残念です。この庭園は、室町時代の代表的な傑作なのですから。


・豊臣秀吉(中略)と醍醐寺三宝院(京都)(中略)

老いてもなお美しいものを追い求める、秀吉の貪欲な美意識への追求が感じられます。花の命は短く儚く美しい、だからこそ、桜をこよなく愛していたのかもしれません。


・豊臣秀吉(中略)と醍醐寺三宝院(京都)(中略)

死の恐怖からは逃れられませんでした。だからこそ、浄土のような庭を造り、そこに自分の死を重ね合わせて、永遠の繁栄を願う。それが、権威を示す豪華な庭に、一抹の悲しみを感じさせるさせる無常感が生まれるのではないかと思います。庭には死生観が存在する、だから人間を魅了するのではないでしょうか。


・岩崎彌太郎の場合も、庭造りの完成を待たずに亡くなっています。(中略)

弟に託して亡くなっています。権力を掌握した者はどうして晩年に庭を造り始め、完成前に亡くなってしまうのでしょうか?


・彌太郎は、社員達の憩いと交流の場として、そして賓客の接待の場所として、清澄庭園を造り始めます。企業家が美術品収集などに財を投じる傾向の中、社員のために庭を造り活用するというのは、極めて新しい発想でありました。そしてこのことが、次の時代の企業家である松下幸之助、稲盛和夫に受け継がれ、日本の経営者の庭造りの流れを組むものになったと思います。

・彌太郎は、これほどの石をこの庭に持って来られたのは、海運業王の自分だからこそなのだと、自負したかったのではないでしょうか。自分の力をアピールしたいという権力者の気持ちが、庭園造りに現れているのです。


・茶道へのキリスト教の影響(中略)

カトリック教会の日曜ミサに一緒に行くのですが、神父が聖杯を白い布で清める過程が、茶碗を茶巾で清める所作にすごく似ているなと思っていたのです。


・一休寺の住職からも、濃茶の回し飲みは、ミサの聖餐式で信者が杯を回し飲みすることから来ていると伺ったことが印象的でした。


・ブルーノ・タウト(中略)桂離宮(中略)

庭園全体の結論として、ーーー芸術は 意味である 最大の 単純のなかに 最大の 芸術がある(中略)

同じ遠州作品・日光東照宮にも行きましたが、きらびやかな様相に批判的な目を向けています。


・ブルーノ・タウトは曼殊院も「世界において唯一無二である」と絶賛しています。


・控えめだけど計算されつくした美は、客を心からもてなすためのものです。訪れたも者はその細やかな心配りに、感銘を受けるのでしょう。ブルーノ・タウトもその一人でした。


・祇王寺の庭園(中略)

静寂の中に、流れる水の音と鳥の声、そして風を受ける竹のそよぎ。苔に映るモミジ越しの木漏れ日。五感に訴えかける美は、川端康成だけでなく訪れるすべての人を魅了します。


・日本の美は、四季や自然の中にあり、その中心は虚空、禅の精神に通じる精神性の深いものが根幹にあることを説いている


・エリザベス女王二世(中略)と龍安寺(京都)(中略)

ヨーロッパの方を龍安寺に案内したときに、「どうしてエリザベス女王二世は、石庭を絶賛されたのでしょうね」と聞いたことがありました。

ある方のお返事に納得しました。それは日本人の見立ての美です。白い砂利を水と喩えて、砂利の中に配置されている岩を眺めながら、水の流れを感じ取る。その「見立て力」という美意識は日本人独自のものだと指摘されました。そして、シンプリシティ(単純さ)と石の配置の絶妙なバランス感覚。


・龍安寺(中略)

そもそも、南庭に砂利を敷き詰めるのは、太陽や月の光を砂利に反射させ室内を明るくする明かり採りが目的でした。また、南庭は聖域として仏教的儀式を執り行うために使われていました。


・石庭と美意識の融合(中略)

海外では「禅」は宗教性というよりは哲学性が注視されています。「無駄を剥ぎ取り、最低限の要素、つまり石と砂だけで空間を見事なまでに芸術的なものにする」。龍安寺の石庭のおかげで、日本の庭園美が世界に認識されていくのです。


・親日家のデヴィッド・ボウイ(中略)

1990年代には、イマンと新婚旅行に京都に来ていますが、滞在したのは老舗旅館「俵屋」でした。また、江戸時代創業の蕎麦屋「晦庵 河道屋(みそかあん かわみちや)」本店もお気に入りだったそうです。俵屋と河道屋は、スティーブ・ジョブズも好きでした。二人が遭遇した可能性は少ないと思いますが、好みが似ているのが不思議です。


・実はこの人里離れた禅寺の正伝寺の庭は、知る人ぞ知る名勝なのです。


●書籍『一流と日本庭園』より
生島 あゆみ (著)
出版社:CCCメディアハウス (2019年3月初版)
※amazonで詳細を見る